植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

初冬の街散歩

寒さが本格的になってきた。紅葉はほぼ散っており、道端の草も枯れている。街中を歩いて植物を探してみた。

 

12月の花といえばサザンカである。街を歩いていると色々な園芸種に出会う。画像は赤色のカンツバキと呼ばれるタイプだ。椿という名がついているが、花びらが一枚ずつ分かれていて平面的に広がり華やか、という特徴があり、サザンカの仲間である。原種は白花で、西南日本の山野に自生している。一度野生のものを見てみたい。

 

イソギク(上) 民家の庭先などでよく見かける。今頃咲く草の花は珍しい。(花壇のパンジーなどを除く)花びらがなく筒状花のみだが黄色が鮮やかだ。本来は海浜の植物である。冬の三浦半島の海岸ではツワブキなどと一緒に咲いている。陽光あふれる浜辺によく映える。

 

地味で目立たないがヤツデやビワも冬に花が咲く。昭和期ぐらいに建てられた民家の庭などに多い。丈夫で育てやすく、ビワは実も楽しめるのでよく植えられたようだ。晴れた日の午後など数少なくなった昆虫が来ているのを見ることがある。

 

ヘクソカズラの実(下) 夏場に長い間可愛い花を付けていた。代表的な雑草で、道端やフェンスでよく見かけた。今は葉を落としてツヤのあるオレンジ色のツブツブの実をどっさり付けている。いまだに無くならないのは、実を潰すと臭うため鳥が敬遠しているためであろう。

オオバン(鳥)

また別の都市河川。沿道を2キロほど歩いた。空は曇って北風が吹いているが、鳥や植物を探しながらだと寒さは感じない。川は街中も通るが、流域は郊外で田畑が残っている。川幅が大きくて水量も多いため水面が広がる。護岸はコンクリートでも中州などに植物が多く環境は良い。

最初に出会った黒い鳥。いつもの川にはいない種類だ。クチバシとそれに続く額(ひたい)が白くて目立つ。全体に黒光りしてムッチリとした感じである。大きさは一緒に泳いでいたカルガモと比べると少し小さいくらい。浅瀬に立った様子を見ると、白っぽくて大きな足指が見える。ヒレのようなものが付いているようだ。

 

ガンカモ類ではなくクイナ科。水から上がるとカモとは異なり丸っこい体形だが、水面を泳いでいるとスラリとして見える。類縁のバン(鷭)はやや小型でクチバシと額は朱色だ。夏、本州中部以北で繁殖し、冬は本州中部以南に移動する。そのため近場では冬鳥または留鳥(りゅうちょう)である。

飛びたつコサギ

 

いつもとは別の川。やはり街中で、川幅は広く、ところどころ河原になっている。見ると大きな鯉がたくさん泳いでいる。今日は風が肌寒いが晴れて気持ちが良い。両岸の道は多くの人が散歩やサイクリングを楽しんでいる。

 

歩いていくと川の瀬にシラサギが一羽でたたずんでいるのを見かけた。クチバシと足が黒く、足指が白っぽい黄色で、いつもの川で見慣れたコサギ(小鷺)である。食事中のようだ。ほとんど動かないが、瞬間、クチバシを突っ込み、頭をあげると小魚を咥えている。その他の鳥にはほとんど出会わず、ハクセキレイが飛んでいったぐらいだ。

 

30分ほど歩き、街の中心部に近づいた時、河原にコサギが5、6羽集まっているのが見えた。枯れたススキやアシの繁みの間である。カメラを取り出して近づき、ピントとズームを合わせようとすると、急に飛びたち始めた。

 

すると出てくるわ出てくるわ。茂みに隠れていたものが次々と飛びたつ。全部で30~40羽いただろうか。大きく羽を広げて水面を駆け出し飛び上がる。それぞれ空中で様々な動きをしている。慌ててシャッターを切ったが、満足な画像はほとんど撮れていなかった。突然の壮観に夢中になってしまったようだ。

ツタが描いた絵2022

昨年の今頃、朝の駅で電車を待っている時ふと気づいた光景。フェンスに張り付いて縦横に広がるツタのツルが、壁に掛けられた風景画のように見えた。

 

電車が発着するたびに巻き起こす風でどんどん葉が飛んでいく。昨年は気が付いた時にはほとんど葉がなくなって、ツルしか残っていなかった。今年は何とかイイカンジで葉が残った画像を撮ることができた。

 

真っ赤に紅葉する木といえば近場ではハゼノキやニシキギハナミズキなどがあるが、色はやや単調だ。ツタの紅葉は強烈な赤で、部分的に白いところや緑が残って黒っぽく見える部分がある。変化が多く、なかなか渋くて味がある。フェンスが白地なので、和紙に描かれた彩色の日本画といったところか。

コガモの団欒

もう12月だが、穏やかな日が続く。昼間は晴れて暖かい。いつもの川のコガモ(小型のガンカモ類の一種)たちは今日も集まって泳いでいる。朝方は全員浅瀬で流れに首を突っ込み、水草を食べていた。くるくる動き回って一時も止まらない。何をしているのだろう。

 

羽色が茶系統でうろこ状の模様がメス。頭が赤茶色で目の周りに濃い緑色の隈取りがあるのがオスである。羽色や模様も違う。10月末から始まったオスの婚姻色への換羽も終わってオスメスが明瞭に分かれた。

 

皆、好き勝手な方向に動いており、互いに意識している感じはしない。オスは「チッチ」と聞こえる高い声で、メスは低く「クエー」と鳴きかわしている。時たま羽を広げて羽ばたくが、飛び立つことはない。家族の楽しい団欒(だんらん)といった感じである。

ハゼノキの紅葉

里山の雑木林の中は薄暗い。高所にある葉に陽が当たっており、下から見上げて透過する色を見ている。ハゼノキの真っ赤な紅葉は美しいので有名であるが、こういうのもステンドグラスのようでなかなか良い。

 

ウルシ科の小高木。樹高は10mほどになる。小葉9-15枚の奇数羽状複葉でウルシに似ているが、小葉が細長く先が尖る。原産国は中国。関東以西で栽培され広がった。実に含まれるワックス成分から木ロウを作り、和ろうそくなどの原料としたのである。今は、鳥が種をまくのか野生化したものをよく見る。

 

この里山に多いのはかつてのそんな歴史があったのかもしれない。ウルシと同じで樹液にうかつに触れるとかぶれるので注意。

 

ハマヒサカキの花

里山の環境を残した公園を歩いていて見つけた花。今の時期サザンカなどを除いて咲いているものは珍しい。雑木林の林縁で大きな木の陰になっており、直径4㎜ぐらいと小さい。今の時期でなければ見逃してしまうだろう。

 

ツヤのある深緑の葉には鋸歯があり、一見してヒサカキの仲間と分かる。ただし花期はヒサカキが3~4月であるのに対し、今頃(10~12月)である。またヒサカキの葉は先が尖るが、こちらは先が丸い。花びらは5枚。雌雄別株で、画像のものは多くの雄シベが見えるので雄花のようだ。

 

サカキ科の常緑低木。本州中部から沖縄にかけての海岸に分布。丈夫なので街路樹などにも使われる。サカキやヒサカキと違い神事には用いられない。これらに特有の花の匂いはやはりある。悪く言えばガスに付けられている臭い。よく言えばちょっと癖の強いお香のようにも感じる。