植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ヒメツルソバのツル

季節が冬へと進み、道端の植物も枯れてだいぶ寂しくなってきた。今頃目立ち始める花がヒメツルソバだ。コガモたちのいる川では護岸に大きく広がって、薄いピンクの花をびっしりとつけている。

 

タデ科多年草。ヒマラヤ原産で明治時代に園芸用に導入された。今では至る所でこの花を見かけるようになった。這うように茎を伸ばし地面に接したところで根を出して広がっていく。花は直径1㎝ぐらいの球形の集合花で、始め紅色がかかり、そのうちに白っぽくなる。

 

姫蔓蕎麦という名前は、小さくて可愛い感じのツル性のソバに似た花という意味だが、以前から違和感があった。どう見てもツル性ではない。ところが今回コンクリートの護岸に広がったものに直接触れられる場所を見つけて納得した。垂れ下がっているものを持ち上げてみると、ずっと上の方まで根は出しておらず、茎が延々伸びていることが分かった。これはまさにツルだ。長いものは3mほどもある。

 

コンクリートの割れ目やすき間から芽を出して永年伸び続けたものだろう。ヒマラヤの岩場で絨毯のように広がっている様を想像した。

ヤマガキの実

うちの狭い庭にいつの間にか生えてきたカキノキ。芽生えからもう十数年になる。樹高が4mぐらいになり花も咲くのだが実ができなかった。今年ようやく実がなった。陽光に映えて美しい。

 

実の形は少し角張った球形である。大きいものでも径4.5㎝と小型で、明らかに普通のカキとは異なる。ちなみにスーパーで買ったものは径7~8㎝、長さ4.5㎝である。干し柿になる縦長のものとも違っている。調べてみるとヤマガキ(山柿)と呼ばれる野生種らしい。どうやって我が家に来たのだろう。

 

1個傷があって柔らかくなっているものがあり、切って少し舐めてみるとちゃんと甘い。しかし甘酒のような発酵した味とわずかな渋みがあり、これではダメだ。完熟すれば甘くなる可能性はあるわけだが、柔らかいものは好みではない。そこで正常な実の皮をむいて小さなカケラを舌に乗せたところ…。痺れるような渋み!これが渋柿の味なんだと変に感心した。

 

さてどうしてやろう。まだ固いようなので当面はもう少し熟すのを待つことにする。それで渋いようなら、ネットに様々な渋抜き法がある。焼酎につける、干し柿にする、冷凍庫に入れておく、など。全部試してみるつもりだ。

多摩丘陵のリュウノウギク

先日リュウノウギクについて自然のものを見たことがないなどと書いた。ところが数日前多摩丘陵を歩いていると、雑木林の中の道路沿いに次々とノギクが現れた。日当たりのよい小さな崖のようになっている場所だ。これが植物園で見たものと特徴がそっくりなのだ。

 

花の直径は3㎝くらい。1輪取ってバラしてみると強い香気を感じた。甘くすっきりした香りで青臭さがほとんどない。また唇状花、筒状花ともに冠毛はなく、明らかにノコンギクなどとは異なる。リュウノウギクでまちがいないようだ。

 

今まで何を見ていたのだろう。9-10月に大量に咲いていたのがノコンギクばかりだったので、先入観があったせいだろう。いつの間にか入れ替わっていた。ともあれ晩秋の風景が似合う花である。

アオツヅラフジの実

春の林縁で見つけた奇妙なツル植物。いろいろなものに似ているので初めは何者か分からず、花が咲いてようやく名前が分かった。興味を持つと様々なところに生えているのが分かった。その後真夏に若い緑の実ができているのを見つけ、熟して色が変わるのを楽しみにしていた。

 

結局野山では出会えなかった。画像は先日の薬用植物園で撮ったものだ。濃い群青(ぐんじょう)色で白い粉を吹いたような表面の様子はブドウの巨峰そっくりである。葉も渋い感じに黄葉しておりなかなか秋らしい趣(おもむき)がある。

 

じつは有毒なのだが、野山のあちこちで見かけるのは鳥が運んでいるとしか思えない。冬場の空腹な鳥が啄(ついば)んで飛んで行き、食べられずに落とすのだろうか。

 

ナンテンハギの花

丘陵地の畑の周辺を歩いていると林縁の繁みの一部が紫色に染まっていた。今頃何の花だろうと思って見に行くとナンテンハギが大きな群落を作っていた。こういうものを見つけると嬉しくなる。

 

マメ科ソラマメ属の多年草。複葉はナンテンに似た小葉が2枚で、別名フタバハギ。北海道~九州の山野に生える。花期は6~10月とされているが、近場では11月になってもよく見かける。典型的な蝶型の花は蛍光を発しているような鮮やかな紫色で、ガクのあたりが赤紫色である。

ヒイラギの香り

ひと月ぶりの多摩丘陵。このところ穏やかな日が続いており歩くと気持ちが良い。さすがに草木は紅葉したり枯れたりしており晩秋の風情だ。足元の草は朝露がびっしり覆っていたが日が高くなると消えた。風が吹くと木からザーッという感じで枯葉が舞い落ち、弱くなった陽光にきらめいた。

 

ふと香水のような香りを感じた。見回すと薄暗い雑木の繁みの中にこの花が咲いていた。甘くスッキリしているが、冷気の中でも少し刺激を感じるほど濃い香りだ。ヒイラギと気づいて、ああキンモクセイの仲間だったなと思いだした。似た薫りである。

 

モクセイ科の小高木。生け垣や公園樹によく用いられるが、本来は山林の下生えや林縁に自生しているものである。雌雄の木があり、寒さに向かう今頃、対生する葉の根元に白い花を咲かせる。強い香りは受粉のため数少ない晩秋の昆虫を集めるためであろう。

 

葉の周りの鋸歯(ギザギザ)が大きく鋭いトゲがある。これを邪鬼が嫌うため節分で門口に飾る風習がある。一方クリスマスの飾りで定番のセイヨウヒイラギは似ているもののモチノキ科の別種である。

コマユミの実

植物園の近くに有名な玉川上水(たまがわじょうすい)が流れている。江戸に飲料水を提供するために江戸時代前期に作られた大規模な水路である。両岸は雑木林になっており遊歩道が通じている。コナラなどの落葉高木が多く明るい日陰を作っており、歩くと気持ちが良い。大昔の武蔵野(むさしの)はこんな感じだったのだろうか。

 

画像は下生えの低木の中で見つけた木の実である。赤黒い果皮からツヤのある朱色の種が1、2個顔を出しており色合いが美しい。調べるとコマユミというニシキギ科の植物であった。マユミ(檀、真弓)の実は派手で野山で見ることが多い。確かにこれは小型のマユミと言えるかもしれないが、どちらかというとニシキギのほうによく似ている。

 

ニシキギは高さ1~3mの低木で、錦(華麗な織物)と書かれるほど紅葉が美しいのでよく庭に植えられている。枝に薄いコルク質の出っ張り(翼、よく)があるのが特徴だ。コマユミはそっくりだが翼がない。雑木林の半日陰に生えていたので紅葉はきれいではないが、その分実が引き立つようだ。