植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

街の花4月下旬

近場の住宅地を歩いていてよく見かける花。庭に植えられたものでもいつのまにか野生化(雑草化?)している場合が多い。民家の外まではみ出していたり、とんでもないところで咲いていたり。

 

シラン(紫蘭、画像上)

街角でよくみかける。ラン科だし赤紫色の派手な花なのだが、丈夫で育てやすいせいか今一つ有難味にかける。庭先で雑草のスギナに混じって咲いていた。日本、台湾、中国で自生する。

 

コデマリ(小手毬、画像下)

民家の庭の定番。大きな株になる。同じ白い花のユキヤナギはもう終わっているが、同じような位置づけだ。中国原産の帰化植物。最近は類縁のオオデマリ(大手毬)も見かける(下)。こちらは花房がちょうど手に入る大きさだ。

 

モッコウバラ(木香薔薇)

中国原産の黄色いバラ。トゲが無く強健なのでよく生垣になっている。2階建ての家ぐらいの大木を見たことがある(下)。

 

ペラペラヨメナ

葉の厚さが薄いことが名前の由来。中央アメリカ原産で日本に帰化。庭に植えられていることもあるが、民家の石垣や水路の側面など垂直の場所で群生していることが多い。花が白から赤に変化するためゲンペイコギク(源平小菊)という雅な名前もある。

 

ツタバウンラン(蔦葉海蘭)

オオバコ科。ヨーロッパ原産で観賞用に導入された。逃げ出して野生化している。これも石垣の隙間などで生えていることが多い。花は在来種のムラサキサギゴケに似ている。

 

マツバウンラン(松葉海蘭)

原産地は北アメリカで日本に広く帰化。匍匐性(地を這う)のツタバに対して垂直に一直線に伸びて先の方に小さい花を付ける。道端でたくさん咲いていると薄紫の雲のような感じになる。

 

クレソン(オランダガラシ、阿蘭陀辛子)

アブラナ科多年草。料理の付け合わせに使われるが、逃げ出して野生化。切れ端が台所から流出して根付いたらしい。水辺を好み、今や住宅地の水路で盛大に花を付けている。こうなるともう食べる気がしない。

サルトリイバラの花

職場近くのマンションのフェンスに、昨年スルスルとツルが伸びてきたもの。独特のウエーブがかかった葉は冬には落としていた。春の訪れとともに葉を出し、見ると花をつけている。ごく小さくて地味だ。ちゃんと観察するのは初めてである。

 

バラ科ではなくサルトリイバラ科。日本中の野山に自生する。同じ位置から伸びる巻きひげと茎についている下向きのトゲで、ものに絡みついて伸びていく。名前の由来はツルと巻きひげで猿を捕まえることができそうというもの。

 

葉の付け根に淡黄色の花ぶさを付ける。一つの花の大きさ7㎜ぐらい。花びら(花被片)は5枚で先端がくるりと巻いている。雌雄異株。画像のものは、緑色の子房と3つに分かれた柱頭が見えるので雌花だ。花期は4-5月。秋10-11月には朱赤色の丸い実になる。昨年は見られなかったのでちょっと楽しみだ。食べられるがおいしくないそうである。

 

ダンダラテントウ

ノイバラのツボミにいた極小のテントウムシ。直径4㎜ぐらいの半球形でつややかな黒色をしている。接写すると前方(上の方)のヘリ近くの二つの赤い三日月紋がわかる。この画像ではわかりにくいが、白い眼のようにみえるのは胴部の模様だ。

 

最初、ナミテントウの2つ星型かと思ったが、一回り小型で赤い紋が前に偏っている。調べてみるとよく似た特徴を持つテントウムシが何種類もいることに驚いた。大きさと文様の位置、形からダンダラテントウと結論した。

 

ダンダラとは段々に色が異なる模様をいう。この虫は模様の変異が大きく、南西諸島にいる個体は赤地に太い黒マジックで顔を描いたような面白い模様をしている。これがダンダラという名の由来である。一度ネットで画像を見てみられることをお勧めする。一方、九州より北の方で見られるものは黒地に小さな斑紋が入ったものが多く、斑紋の数は4つや2つがある。

 

食性はナナホシテントウと同じ植物につくアブラムシだ。画像ではアブラムシが前にいて、その残骸らしきものも見える。極小の世界で天敵としての活動が繰り広げられていたようだ。

里山の植物4月中旬

サクラの満開後は急に暖かくなった。前回と同じ日に神社の周辺で出会った花たち。

 

イチリンソウ(画像上)

キンポウゲ科。切れ込みが多い葉と、1輪だけ花を付けるのが特徴。花びらにみえるのは硬いガクである。そのため花が長持ちする。

 

ニリンソウ(画像下)

イチリンソウの類縁種。やや小柄で葉の形が違う。1本の花茎には2、3個のつぼみがあり、一輪ずつ少し時間をおいて咲いていく。花が長持ちするため2輪咲きが多いが1輪や3輪で咲いているものもある。

 

タンポポ

アカシジミが来ている。市街地ではセイヨウタンポポ外来種)が多いのだが、多摩丘陵で出会うのは今のところ在来種のカントウタンポポばかりである。花の付け根の鱗片状のガク(総苞)がめくれていないのが特徴だ。休耕地のなどに一面に生えていると、きれいだと思う。しかし周りの耕作中の畑に種(綿毛)を飛ばすのは困ったものだ。

 

フデリンドウ

小型の春リンドウ。先日の花は一輪だけだった。この付近のものは花がいくつか集まって花束のようになっている。拡大すると美しい。

 

クサイチゴ

2週間前は咲き始めで花も少なかった。今は盛りで多くの花を付けている。

ニオイタチツボスミレの香り

また別の里山。散りつつあるサクラを 観ながら歩いた。多摩丘陵にある神社の境内周辺で、草刈りなどよく手入れされている。1週間前は薄紫のタチツボスミレが花盛りだったが、もう花が終わってきている。

 

中に紫色が濃いものがあった(画像上)。花の中心部が白く抜けた感じである。葉の形などそっくりだが、顔を近づけるとタチツボと違って香水のようなふくよかな香りがする。ニオイタチツボスミレだ。北海道南部の一部以南に分布する別種である。花ビラが微妙にぽってりしていてビオラ(西洋スミレ)を思わせる。花柄にビロード状の毛があるのも特徴だ。下に普通のタチツボスミレを示す。

 

香りを表現するのは難しいが、少し調べてみた。香水の世界ではスミレ系の香りはよく使われる。成分も研究されており、主なものはα(アルファ)イオノンという物質である。化学合成されて色々なものに香料として使われている。そのためどこか身近な感じがする。

 

昔は丘陵の尾根などに群生しており、そこはよい香りに包まれていたそうだ。今は近場では意識して探さないと見つからなくなっている。

 

里山の植物4月初旬(その2)

里山の林縁で見つけた花。

 

ヤマザクラ(画像上)

花と一緒に赤っぽい新芽を伸ばす。漆器のようなおもむきがあって美しい。10ないし11ある日本のサクラの原種の一つだが、一本一本花色や葉の形など微妙に異なっている。ソメイヨシノのような単一クローンではないし、他の種類との交配種も多いためだ。

 

オオシマザクラ(画像下)

ソメイヨシノの片親。大きな花と大木になる性質を与えている。野生種の分布は伊豆諸島と伊豆半島、房総半島の一部に限られている。近場に大木が多いのは薪炭用として移植されたものか。左の花にナナフシの幼虫が付いている。

 

アオキ

常緑で枝まで緑の(昔の言い方で「青い」)低木。雌雄異株。画像上の花は雄で、4つの雄シベを持つ。雌株は冬の間ずっと真っ赤な実を付けている。鳥には不味いらしく、食べ物の少ない今頃になっていつの間にか無くなる。1個だけ残っていた。

 

イロハカエデ

カエデの木も新芽に覆われている。よく見ると小さな花も。葉を透けた陽光が爽やかだ。

 

スズメノヤリ

イネ科。長い花柄を先端に飾りが付いた槍(毛槍)に見立てたもの。普段は目立たないが、花が咲くとオレンジ色の雄シベが外に出てくる。

 

スミレ

帰り道。アスファルト道路わきの石垣の隙間で咲いていた。都会地でも結構見かけるので、有難味がない。

里山の植物4月初旬(その1)

先日の里山は道路や畑で大幅に人の手が入っており、植物も平地のものに近い構成だった。今回は違う場所、雑木林が残る多摩丘陵の一角である。下草が刈られて野原のようになったところだ。

 

キジムシロ(画像上)

バラ科。この植物は花柄を伸ばして放射状に広がり先端に花を付ける。その結果花が円形に並ぶ。名前はキジが座るのに敷く筵(むしろ)という意味。

 

フデリンドウ(筆竜胆、画像下)

枯れ葉の中から小さい花が突き出していた。青い色からオオイヌノフグリかと思って見逃しそうになる。息をのむような瑠璃色だ。

 

ジュウニヒトエ

花房が伸びてきて重ね着のようになる。平安王朝時代の十二単(じゅうにひとえ)である。

 

アカネスミレ(茜菫)

薄紫のタチツボスミレが多い斜面の一部分が紫色になっていた。葉の形と表面がビロード状であることからアカネスミレと分かる。

 

ヒトリシズカ

野原に咲くセンリョウ科の多年草。花びらが無く白い雄シベが目立つ。名前は静御前(しずかごぜん)にちなんだもの。

 

タマノカンアオイ

多摩丘陵特有の植物。今頃葉の根元の地面に花を付ける。花びらがなくガクが花のような形になる。