植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ニホンハッカ

多摩丘陵谷戸(やと、幅の広い谷地形のこと)。奥の方に小さな池があり、水が湧き出していて小川になり、下流の谷水田を潤している。水辺の草花を期待して来てみたが、いわゆる湿生植物はあまり無い。そのかわり平地では見られない昔ながらの人里の植物が多いようだ。

 

これも小川沿いの繁みに紛れて咲いていたもの。草丈は30㎝ぐらい。まっすぐ伸びた茎に対生した葉が90度の角度で続く。濃い緑色の葉には尖った鋸歯がみられる。葉の根元に小さな白い花がリング状に集まっている。よく見ると個々の花はわずかに紫色がかかっている。小柄ながら清々しい印象である。

 

全体にシソ科の様相がある。調べてみると、特徴はニホンハッカ(日本薄荷)と一致した。日本在来種のミントである。日本全国に自生。東アジア原産といわれ、西洋のものとは系統が異なる。名前の由来は中国名の「薄荷」の読みがそのまま名前になったもの。メンソール含量が多く、昔から盛んに栽培された。その後輸入品や合成ハッカに押されて廃れた。その名残かもしれない。

2羽のカワセミ

いつもの街中の川。台風による増水が引くと川底の藻などが流されていてきれいになっている。歩いていくと大きな望遠レンズ付きカメラを持った人がいた。近づくとやはりそうだ。都市河川のスター・カワセミである。それも2羽と豪勢だ。

 

この川でも2,3度見たことがある。いずれも一瞬で、低空を高速で飛び去り青緑の光の残像を残すだけであった。非常に用心深く敏捷で人が近づくとすぐ逃げる印象があったが、今日はどうしたことか護岸の上からのぞいても逃げない。何か一生懸命対岸の方を見ているようだが、ガマ(蒲)の繁みしか見えない。

 

黒光りするクチバシが不釣り合いなほど大きいので、身体は小さく細っそりとして見える。後ろ姿は頭から尾羽にかけての緑がかったメタリックブルーの印象が強烈である。翡翠と書いて「カワセミ」とも宝石の「ひすい」とも読むことが納得できる。

イボクサ

谷戸の小川沿いの草むらで小さな三弁の花を見つけた。白っぽいがよく見ると先端が薄紫色である。葉の形などからツユクサの仲間であることはすぐわかる。草丈20~30㎝と小さく、ポツポツと咲く花も径1~1.2㎝とカワイイ。全体に爽やかな印象である。

 

ツユクサ科の一年草。日本全国に分布。水辺を好み水中で育つこともある水生植物である。花は花びらとガクが3枚ずつ、青白い棒状の葯(やく)が目立つ雄シベも3本である。中心部の3つの紫色の点は仮(かり)雄シベと言われる花粉を出さない雄シベだ。

 

稲作などとともに日本に入ってきた史前帰化植物とされる。水田では一般的な雑草というが私は見るのは初めて。花が小さいので気づかなかっただけかもしれない。草の汁をつけると疣(いぼ)が取れるというのが名前の由来。ただ薬効の報告はない。

ノハラアザミと蝶

2週連続の週末台風でどこへも行けなかった。やっと最終日の今日穏やかに晴れたので多摩丘陵谷戸を歩いてみた。まだ大雨の名残で植物はグッショリと水を含んでおり道は一部川になっている。しかし谷水田は無事で黄金色の稲穂が実っている。その周辺や雑木林の林縁はいつの間にかいろいろな秋の花が咲き始めていた。

 

ノハラアザミは近場の秋のアザミの代表である。花は上向きで、花茎は分岐せずひとつづつ花を付ける。秋のアザミの中では大ぶりだ。全体に明るい印象で久しぶりの陽光に良く映えている。8-10月に咲き続ける。今年は林縁の草むらに群れ咲いているのをよく見かけた。

 

蝶が止まっていたので思わずシャッターを切った。キタテハかと思ったが、沈んだ色合いである。タテハの仲間はオス/メスや夏型/秋型で模様が異なる。ネットで調べると明らかにキタテハではない。こうなるとよく似た種類が多い。羽根の形と豹柄の模様から一応ミドリヒョウモンのメスとしておく。羽根の裏側の緑がかった模様が見られれば良いのだが、すぐ飛んで行ってしまった。

ゲンノショウコの花

里山の日当たりのよい草むらなどで見られる。草丈30㎝ぐらいの小柄な植物だが、花はほかの草が繁茂する中でもしっかり存在感がある。花の径は1~1.5㎝。5枚の花弁には薄紫の筋が入る。雄シベは10本で葯(やく、花粉の袋)の青色が美しい。赤紫の雌シベも良い。好きな花である

 

古くからの民間薬で、煎じて飲むと腹痛や下痢に即効を示す。そのため効き目は「現(験)の証拠」というのが名前の由来である。いかにも江戸時代あたりの祖先が好みそうなネーミングである。昔の人々の生活に必須のものであったろう。先にアップしたカラムシなどもそうだが人為的に人里近くに持ち込まれたものではないかと考えている。

 

フウロソウ科多年草。日本在来種。外来種アメリカフウロは街中の道端で普通に生えている。よく似ているが、名前の通り大柄で大雑把な感じ。薬効は記載されていない。

 

カラムシの花

里山や古くからの民家の周辺に多く、半日陰のようなところに群落を作っている。この仲間は葉だけ見ているとそっくりである。よく見ると区別はできるのだが、はっきりしたことは花の時期を待つしかない。花といっても花びらのない薄緑色の小さなものである。

 

イラクサ科の多年生植物。草丈は1m以上になる。冬、地上部は枯れるが地下茎が残っていて翌年また群落を形成する。葉は互生(よく似たヤブマオは対生)して縁に明瞭な鋸歯がある。葉裏は青白い。花は葉の付け根に房状に着く。雄花と雌花があり、雌花は同一株の先端の方に着く。

 

茎の皮から丈夫な繊維が採れるため古くから栽培されてきた。江戸時代に綿の利用が一般化するまで、自家で栽培したものを原料にして衣類や縄などにして使われてきたとのこと。これで人里の近くに群落が多いことが納得できる。植物から自分たちの祖先の生活を想像してみることも面白いと思う。

コガモが戻ってきた

   <カルガモのペア(左)を見ている2羽のコガモ。大きさの違いが分かる。>

いつもの街中の川。夏場はカルガモがのんびり泳いでいるのを見るぐらいだった。涼しい風が吹いていた3日前、小型のカモがペアで泳いでいるのを見かけた。もしやと思い、写真を撮って調べるとやはりコガモ(小鴨)であった。私のデジカメのズームでは解像度はこの辺が限界だが、特徴は分かると思う。

 

羽は2羽とも茶色の網目と斑点模様で、地味なメスの様相でほぼ同じである。5月初旬に派手な模様のオスとカップルを作り仲良くシベリアに旅立ってから5か月。オスはどうしたのだろう。いやひょっとするとこれがモノの本で読んだエクリプスというやつか。

 

コガモなどカモ類のオスは、冬から春の繁殖期というか相手を見つける時期に派手な婚姻色に変わる。その前の夏の一時期はメスそっくりの地味な羽をしている。これをエクリプスという。日食、月食の「食」の意味だそうだ。夏場の子育てとシベリアから海や山を越えて戻ってくる間、目立たない方がタカなどの天敵に狙われにくいのだろう。

 

北で生まれたメスの若い個体かもしれない。エクリプスのオスならこれから羽が抜け替わって変化する。また観察の楽しみが増えた。とりあえずお帰りなさい。