街を歩いていて民家の軒先などで見かけるトクサ。濃い緑色のストローみたいな形をしており、とぼけた魅力がある。シダ植物門トクサ科で北半球に広く分布し、日本の一部でも自生が見られる。ツクシに似た穂(胞子嚢)がついていたので接写してみた。何とも不思議な印象だ。風化した石か化石みたいな質感である。
ここで想像が大過去に飛んだ。3億5千万年前の古生代石炭紀。地上は巨大なシダ植物の大森林におおわれていた。トクサの近縁であるロボク(蘆木)という種類は、高さ10mほどもあったという。
当時は盛んな光合成によるのか酸素濃度が現在より高く、自然発火による森林火災も多かっただろう。ロボクはプラントオパールと呼ばれるケイ酸物質(要するに石)を蓄積して表面を固くし火災から身を守った。その後絶滅するが、近縁の植物は次第に小型化しながら数億年を生き延び、現在のトクサやスギナ(ツクシ)に至っている。
トクサにもケイ酸物質が含まれており、紙やすりのように茎で刃物を砥(と)ぐことができる。トクサ(砥草)の名前の由来である。名前の説明が壮大になってしまった。そんなことを考えていると、街角のトクサが、林立するロボクの巨木に見えてきた。