植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ウバユリ

真夏の今ごろ咲くユリである。近場の多摩丘陵でも見られるそうなのだが、どういうわけか今まで自然のものに出会ったことがなかった。今日、少し離れるが高尾山(東京都)に行ったところ普通に見られたので驚いた。前回のタマアジサイもそこら中で群れ咲いている。あるところにはあるものだ。

 

生えている谷川沿いの探索路は鬱蒼とした木々の下でひんやりしている。早朝では歩いても汗をかかない。炎暑の都市部とは別世界だ。

 

この花は緑がかかって地味なイメージだが、花びらのシャープな曲線が独特の存在感をかもしだしている。ユリ科。他の仲間と異なり葉脈が平行ではなく網状で、葉も広がっているところが変わっている。

 

花が咲くころ葉が枯れて無くなることから、「歯が無い」の掛け言葉で「姥(うば)」の名が付いたという。確かに花に対して汚れた枯れ葉が目立ち、まともなものが一つもない。葉がそれほど無くなっていないのはここのところの晴天続きのせいか。風や雨で枯れた葉が落ちるとスッキリするかもしれない。

タマアジサイ

 

先週の奥多摩では川沿いの林縁でよく見かけた。アジサイの仲間だが花期は遅く8-9月だ。まだほとんどがツボミの状態だった。

 

落葉低木で樹高は1~2m。日本特産種。山地の川沿いなど半日陰で少し湿った場所に自生する。名前の由来はツボミが球形であることによる。ツボミの直径は2㎝ぐらい。大きな葉の上に白っぽい球が付きだしており不思議な感じを受ける。花が咲くときは、風船がはじける感じで中から白い装飾花と薄紫色の両性花が噴き出す。花を包んでいた苞(ほう)は枯れ落ちる。

 

下の画像は花が咲いた状態のもの。最近別の場所で見つけた。花序の直径は10~15cmである。雄シベ雌シベが青色に染まっており美しい。このところ雨が降らず猛暑が続いたせいか、周辺の装飾花がしおれたようになっているのが残念だ。

多摩川上流のノカンゾウ

関東地方も梅雨明けした。ここのところの猛烈な蒸し暑さが少し収まったような気がする。今日は久しぶりの奥多摩(東京都)だ。深い谷間は緑の木々に覆われ、日差しはきついが気温は下界より2~3度低い感じ。何より見上げる空の青色が澄んでいる。駅から数分で河原に出る。多摩川の水量は多めで流れは急だ。川下からの谷風もあって眺めていると実に涼しげだ。

 

川沿いの木々の中の道を歩くと、夏草の中にポツリポツリとノカンゾウ(野萱草)の花がみられた。先日紹介した類縁のヤブカンゾウは八重咲だが、こちらは一重咲きだ。色は少し渋い朱色で和風の趣がある。近場の平地ではまず見かけない。

 

ヤブカンゾウと違って種ができる。川面から10m以上ある道沿いに生えているということはそこまで水が来たのだ。巨岩がゴロゴロした光景とともに自然の猛威を想った。

 

この仲間(キスゲなど含む)はユリ科と思っていたが、遺伝子によるAPG分類でススキノキ科になったと書いた。しかし最近(APGⅣ、2016年)また変わってツルボラン科になっている。多肉植物アロエと類縁らしい。図鑑やネット情報も混乱している。ともあれ、美しいので園芸化されておりヘメロカリス(属名)という名で街中でそっくりな花を見ることがある。

7月中旬の植物

このところ関東地方は猛烈な暑さで、晴れた昼間に外を歩くのは危険だ。今日はようやく曇って少し風も出てきたようだ。近場(電車で15分)の丘陵地を歩いてみた。木々の緑が濃いので、よく注意していないと見過ごしてしまう。

 

ウワミズザクラの実(画像上)

以前「6月初旬:若い木の実」(6月7日付け)で紹介した緑一色の実が、今はこうなっている。黄色、オレンジ、赤、濃い紫色と順次変わっていく。実の色合いやツヤはサクランボと同じで鮮やかだ。

 

ミズキの実(画像下)

これも実の色が緑から少しずつ黒(濃紺)色に変わっていく。

 

ヒヨドリバナ(鵯花)

今頃林縁などでよく見かける白い花。花びらはなくバラけた雄シベがそのように見える。

 

アキノタムラソウ

「秋の」という名前がついているが、この辺りでは6月ぐらいから咲き始め、秋の終わりごろまで見かける。この澄んだ紫色が好きだ。

 

ヤマユリ

先日毎年観に行くところで咲いていなかった。あちこち歩いているとけっこう見かけたので少し安心した。

 

エンジュ(槐)の花

街路樹でいま満開。白い花びらが道路に散り敷いている。花は典型的なマメ科の特徴がある。かすかに甘い香りがする。

 

ニイニイゼミ

おまけ。セミの合唱の中ですぐ近くに聞こえるものがあった。探すと目の前の木にとまっていた。見事な保護色で、2mぐらいまで近づかないと分からない。今回気が付いたのだが、子供の頃とは鳴き声が違うようだ。超音波に近い領域の高音は若いうちしか聞こえないという。ちょっと悲しい気がした。

谷戸田(やとだ)周辺の植物

多摩丘陵の谷は、奥に水が沸いていて小川が流れ出しており、水田として利用されていることが多い。これを谷戸田という。周りの里山も含めて古くから人と自然がかかわりあいをもってきた歴史がある。このような場所は植物も独特である。

 

タチアオイ立葵、画像上)

谷戸田の入り口に植えられていたもの。濃い緑の空間に派手な色彩が妙にしっくり来る。シンボル的な感じだ。この花は梅雨の始まりに咲き始め、咲き終わると真夏になる。

 

ナヨクサフジ(弱草藤、画像下)

農家の垣根の一角がこの花でいっぱいになっていた。ヨーロッパ原産のマメ科帰化植物。牧草と一緒に入ってきたらしい。在来種のクサフジとは花の形などが少し違う。名前は茎が細くて嫋々(なよなよ)していることによる。何故か「弱」と書くのは字が難しいせいか。

 

ブルーベリー

最近この付近でもよく栽培されるようになった。実が大きくなってきたがまだあまり色づいていない。北米原産のツツジ科の果樹で、耐陰性があり林縁などでも育つので木の多い丘陵地向きである。

 

オカトラノオ(丘虎の尾)

丘陵地に多いサクラソウ科の花。咲き始めだ。下草が刈られた杉林で一面に咲いて同じ方向になびいているのを見たことがある。

 

オオバギボウシ(大葉擬宝珠)

キジカクシ科。普通のギボウシ(園芸種)は民家の庭などでよく見かける。これは自生種で、葉がずっと大きい。

 

チダケサシ(乳茸刺し)

ユキノシタ科。地味な赤紫の花。名前は、昔、乳茸(ちちたけ)という食用キノコをこの茎に刺したためという。

 

ホタルブクロ

キキョウ科。5~6月は雑木林の林縁などでよく咲いていた。まだ残っている。純白の花は珍しい。

 

コマツナギ(駒繋ぎ)

マメ科。夏草の中に埋もれるように咲いている。小型のクズの花といったところだが、草ではなくツル性の木だ。

 

アマガエル

おまけ。体長2㎝ぐらいの小さなカエル。緑色で保護色になっている。よく見ると葉の上に何匹かとまっている。目の前に小虫がいるが、カエルは動くものしか見えないと聞いたことがある。虫は動いたらパクッとやられるだろう。

タカトウダイ(高燈台)の花

トウダイグサの仲間の中では背が高く、この個体は80㎝ぐらいある。花は春4月の高尾山で見たナツトウダイ(夏燈台)のアバンギャルドな花をおとなしくしたような構成になっている。開花時期からいうとこちらの方が「夏」にふさわしい。

 

トウダイグサ科の花はヘンテコな印象を受けるが、皆同じようなパターンだ。花茎の先が分岐して分岐点に決まった数の苞葉が付く。4枚の花びらのようなものは蜜線(みつせん)で、中央のツブツブが雄シベだ。雌シベは下に隠れていて成熟すると伸び出てくる(画像下)。いぼ状の突起のある球状のものが子房(実になる)である。先の曲がった雌シベが釣りの仕掛けを思わせる。

 

ところで気になるのが花茎の分かれ目についている蜜線。ポツンとあって色が違うし、雌シベはついていないようだ。以前見たナツトウダイにもあった。受粉のためにアリなどを呼ぶカラクリかもしれない。

イグサ(藺草)

標準和名は「イ」といい、日本最短だ。多摩丘陵の谷水田の畔に生えていたもの。

 

藺草といえば畳表に使われ、あの匂いを思い出す。都会のマンションでは畳はもう使われなくなっているかもしれないが、近所ではご町内に一軒ぐらい畳屋がまだある。最近は、純植物性で冬暖かく、夏はひんやりする畳が見直されているようである。

 

イグサ科の多年草。葉は退化しており、そのように見えるのは茎、正確には花茎である。長さは50㎝ぐらい。先端に地味な花の塊を付けるが、苞(ほう、花を包むガク)が茎のようにさらに伸びるので、茎の中間に花が付いているようだ。

 

日本全国の水田や湿地に分布する。かつて日本の農村ではほとんどの生活必需品を自給自足した。ここのイグサも栽培されていたものの名残かもしれない。