植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ヤブカンゾウ(藪萱草)

梅雨も後半となり晴れると高温多湿でもう真夏のようだ。駅で電車を待っていたら線路脇の草むらの中にヤブカンゾウの朱色の花を見かけた。今年もこの花の時期になったなあと思う。

 

水田の近くなど湿気が高い場所を好む。近場の丘陵地ではちょうど田植えの時期で、新苗が植えられた水面に鮮やかな色がよく映える。花の直径約8㎝。雄シベ雌シベが花弁に変わった八重咲である。八重咲でない近縁種のノカンゾウは最近見かけない。

 

別名ワスレグサ(忘れ草)という。朝開花して夕方には萎む一日花(実際は2,3日持つようだ)で、多数のつぼみが用意されていて毎日過去を忘れたように新しい花が咲くからという。ユリ科に分類されていたが、近年の遺伝子解析によるAPG分類で何度か改訂され、ワスレグサ科から現在は聞いたことがないようなススキノキ科になっている。なお、漢方薬になるカンゾウ(甘草、マメ科)やワスレナグサ忘れな草ムラサキ科)は、名前は似ているが無関係だ。

 

中国原産の史前帰化植物。遺伝的に種ができず、地下茎で増える。つまりいま生えているものは人為的に持ち込まれたか、水害等で逸出したものだ。薬として用いられ、また春の新芽は酢味噌和えなどにすると美味しいためらしい。

 

雄シベ雌シベが一部残っていて花の形はみな違う。下は色が黄色っぽいもの。

 

古い民家の近くで群落になっていた。遠い昔に植えられたものだろうか。

テリハノイバラ2023

好きな植物で毎年紹介している。近場では今頃が開花期で、日当たりが良く風が強い河原や丘陵地に多い。葉は普通ツヤのある濃緑色だが、この個体は珍しく全体に黄色っぽくて黄緑色をしている。

 

花の直径は4㎝ほどもあり野バラの仲間では大型だ。しかし花びらが変形していたり、微妙にピンク色が入っていたりして整っていないものがほとんどである。そのためか自然環境ではあまり目立たない。いかにもノイバラ(野茨)といった素朴な花である。

 

日本原産で、本州以南に分布する落葉低木。2~5mにも及ぶツルは立ち上がらず地面を這うように伸びる。ツルから短い側枝が出て先端に数輪の花序を付ける。この植物を基本原種として1890年代から欧米で育種が始まり、ツヤのある葉(テリハ、照葉)を持つ様々な色のツルバラの園芸種が創り出されている。

5月中旬の花

最近晴れると日差しが強く感じられ空気も湿気を帯びてきて夏の気配だ。今の時期、草木は葉をぐんぐんと伸ばしているところで花を付けているものは少ない。ここ10日ぐらいで街や近場の丘陵地で見かけた花。

 

ヤマボウシ(画像上)

公園にあった大木。木全体を覆う花が見事だったので思わず撮影した。野山に自生しているが、最近は街角や民家の庭に植えられていることが多い。

 

ノアザミ(画像下)

草刈りがされて日当たりが良くなった里山の斜面の草原(くさはら)に点々とみられた。

 

イボタノキ

雑木林の林縁の低木。葉は楕円形の小葉が対生していて独特である。少し癖のある強い香りでもすぐわかる。今は咲いている花が少ないせいかハチやハナムグリの仲間がたくさん来ていた。

 

フタリシズカ

先月の咲き始めのころは花穂が2本のものが多かった。今頃になると数が増えて画像のもののように5本もあることがある。「二人静か」とは言えないが、楚々とした感じは変わらない。一緒に写っているのはハルジオン。

 

5月初旬の野の花(青、紫)

連休中に近場の低山で出会った花。

 

ホタルカズラ(画像上)

ムラサキ科。一度近くの里山で見かけたことがある。今回は山の中の林縁に固まって生えていた。

 

ハンショウヅル(半鐘蔓、画像下)

キンポウゲ科のツル植物。神社の植え込みに絡まっているものを見つけた。花はこの後、下端が4つに割れて反り返る。

 

コケリンドウ(苔竜胆)

道路沿いで草が短く刈りこまれて芝生のようになっている中に点々と花がみられた。花は直径が7、8㎜しかなく、淡い空色で地味。人に教えてもらうまで咲いていることすら気づかなかった。それでも接写すると立派なリンドウで驚く。

 

ムラサキサギゴケ

シソ科。湿気の高い林縁に群生していた。水田の近くなどにも多い。小さくて目立たない。

 

カキドオシ

林縁の斜面に多い。花は大きめで二輪ずつ咲くため、シソ科の仲間では目立つほうである。

 

ナルコユリ

キジカクシ科。今の時期、よく似たホウチャクソウとともに雑木林の中に多い。長く伸びた枝の葉の下にずらっと花が並ぶのが特徴。よく似たアマドコロとは花の付け根に短い花柄がある点で異なる。

5月初旬の野の花(黄色)

低山の林の中の道を歩いていて出会った植物。少し谷間のようになっていて、たまに木漏れ陽があるぐらいの半日陰。近くに沢があり、所々崖から水がしみだしているような湿気の高い場所である。先ずは一番目立つ黄色の花から。

 

キンポウゲ(ウマノアシガタ、画像上)

花びらに見えるガクはセロファン紙を重ねたもののような独特の煌めきがある。好きな花だ。ただし有毒。野に置いて鑑賞するだけにしよう。

 

キツネノボタン(画像下)

キンポウゲ科。いつも土が湿っているような場所に多い。ほとんどの花が小さく、整った形をしていないので雑草感が強い。

 

クサノオウ

花は上の二つと似ているがこれはケシ科。花弁が4枚で実(棒状の物)の形も違う。

 

ニガナ

キク科の仲間は日向を好むものが多いが、雑木林の中でよく見かけるので日陰のものという印象が強い。細い短冊のような花弁が特徴的だ。

ニョイスミレとシラユキスミレ

ニョイスミレは近場では一番遅く咲くスミレだ。丘陵地や山地の沢沿いなどやや湿ったところの明るい木陰に群生していることがある。他の草の中から長い花茎を伸ばし小さな花をつける。花色は白く、唇弁(しんべん、下向きの花びら)に紫色のスジの模様が入っている。楚々とした印象である。

 

その中に希に真っ白な花をつける亜種がみられ、その色からシラユキ(白雪)という名前が付いている(画像下)。以前一度見つけて紹介した。今回は少し離れた別の場所で見つけた。よく気を付けて探さないと分からない。

花びらの紫色のスジは蜜標というものである。英語でネクター・ガイドとかガイド・マークと呼ばれる。スミレの場合、花の中に蜜を出す腺があり、ガクの後方に突き出た距(きょ)という袋の中に蜜がたまる。その蜜の在り処へと虫を導くものだ。もちろんその途中に雄シベと雌シベがあって出入りする結果授粉することになる。

 

蜜標がないのは受粉のために不利ではないかと思うが、消えてなくならないところを見ると何か別のカラクリがあるに違いない。ただ、花を鑑賞するうえで物足りない感じがするのは私だけだろうか。

マルバウツギ

連休中低山のハイキングコースを歩いた。東京都と神奈川県の境ぐらい。薄暗い林の中の道には花をつけたコゴメウツギ(バラ科)が次々に現れる。それに交じって大きめの白い花を咲かせていたのがこの木だ。本来は円錐形の花序(花の集まり)が立ち上がるが、今はほとんどが倒れた形になっている。

 

アジサイ科の落葉低木。樹高1~2m。花は5弁で径1㎝ぐらい。花の中央にオレンジ色のリング(花盤)があるのが特徴だ。新緑の葉も相まって、今の気候のような爽やかな印象を与える。ツボミが球状なところなどカマツカバラ科)とも似ているが、花びらの形や雄シベ雌シベの数などが異なる。

 

ウツギ(ウノハナ)の仲間だが葉が丸いのが名前の由来だ。「ウツギ」(空木)というのは古来枝が中空になった植物の一般名でもある。そのため現在の分類では多くの科にまたがって「ウツギ」の名称がある。

 

下は同じ山道で咲いていたツクバネウツギ(スイカズラ科)。ガクが羽根突きの羽根に似ている。生垣で見るアベリア(ハナツクバネウツギ)はその園芸種。一番下は公園に植えられていたタニウツギスイカズラ科)。本州の日本海側に自生。「ウツギ」の花は全部白かと思ったら派手な種類もあるようだ。