ひと月ぶりの多摩丘陵。このところ穏やかな日が続いており歩くと気持ちが良い。さすがに草木は紅葉したり枯れたりしており晩秋の風情だ。足元の草は朝露がびっしり覆っていたが日が高くなると消えた。風が吹くと木からザーッという感じで枯葉が舞い落ち、弱くなった陽光にきらめいた。
ふと香水のような香りを感じた。見回すと薄暗い雑木の繁みの中にこの花が咲いていた。甘くスッキリしているが、冷気の中でも少し刺激を感じるほど濃い香りだ。ヒイラギと気づいて、ああキンモクセイの仲間だったなと思いだした。似た薫りである。
モクセイ科の小高木。生け垣や公園樹によく用いられるが、本来は山林の下生えや林縁に自生しているものである。雌雄の木があり、寒さに向かう今頃、対生する葉の根元に白い花を咲かせる。強い香りは受粉のため数少ない晩秋の昆虫を集めるためであろう。
葉の周りの鋸歯(ギザギザ)が大きく鋭いトゲがある。これを邪鬼が嫌うため節分で門口に飾る風習がある。一方クリスマスの飾りで定番のセイヨウヒイラギは似ているもののモチノキ科の別種である。