梅雨も後半となり晴れると高温多湿でもう真夏のようだ。駅で電車を待っていたら線路脇の草むらの中にヤブカンゾウの朱色の花を見かけた。今年もこの花の時期になったなあと思う。
水田の近くなど湿気が高い場所を好む。近場の丘陵地ではちょうど田植えの時期で、新苗が植えられた水面に鮮やかな色がよく映える。花の直径約8㎝。雄シベ雌シベが花弁に変わった八重咲である。八重咲でない近縁種のノカンゾウは最近見かけない。
別名ワスレグサ(忘れ草)という。朝開花して夕方には萎む一日花(実際は2,3日持つようだ)で、多数のつぼみが用意されていて毎日過去を忘れたように新しい花が咲くからという。ユリ科に分類されていたが、近年の遺伝子解析によるAPG分類で何度か改訂され、ワスレグサ科から現在は聞いたことがないようなススキノキ科になっている。なお、漢方薬になるカンゾウ(甘草、マメ科)やワスレナグサ(忘れな草、ムラサキ科)は、名前は似ているが無関係だ。
中国原産の史前帰化植物。遺伝的に種ができず、地下茎で増える。つまりいま生えているものは人為的に持ち込まれたか、水害等で逸出したものだ。薬として用いられ、また春の新芽は酢味噌和えなどにすると美味しいためらしい。
雄シベ雌シベが一部残っていて花の形はみな違う。下は色が黄色っぽいもの。
古い民家の近くで群落になっていた。遠い昔に植えられたものだろうか。