日本に自生するバラの原種の一つ。1-2mの高さの小低木で、葉は奇数複葉。枝はややツル性を持つ。トゲが多く、「茨(いばら)の道」という比喩に使われる。
一方花は可憐で、小さな花を多数つける。花弁は5枚で先端がくぼみいわゆる「ハート形」をしている。拡大すると花びらの質感は白い和紙で作ったもののようである。外見は地味で目立たないが、香りが強く存在が知れる。小さくてカワイイものを愛するのは日本独特の感性だそうであるが、そのスピリットに影響を与えたかもしれない。
世界のバラの品種改良は欧米を中心に大型化を志向してきており、一本の花枝に一輪の花が基本だ。その中で原種として房咲き(ふさざき。一本の花枝にいくつもの花を咲かせる)の性質(DNA)を与えたものである。(大場秀章著『バラの誕生』)。
丹沢や関東山地では林縁や道路際にこの花が多い。今頃は花盛りで山がバラの香りに包まれているだろう。