植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ゼンマイの葉

山菜としてよく知られているシダ植物である。全国の山野に自生する。ただ食用になるのは平面螺旋型に丸まった新芽である。その後どうなっていくのか知らない人も多いのではないだろうか。

 

今の時期は大きく葉を伸ばし高さも1m近くになる。2種類の葉があり、中心部に直立した茶色の短い方は胞子を付ける胞子葉だ。開きかけの未熟な葉のような形をしており、短期間で枯れてしまう。一方、緑色の葉は光合成する栄養葉で2回羽状複葉。個々の小葉は先が尖って根元が丸い長三角形をしている。

 

画像下は新芽(4月7日撮影)で、山菜採りの対象になるのはこれだ。表面は綿毛で覆われているが葉が展開するとなくなる。日照を好むので、定期的に下生えの植物が刈られる里山や畑の周辺などで群落になっていることが多い。多摩丘陵ではまだよく見かける。

ベニシダの新葉

ベニシダは近場ではごく一般的なシダであることは以前「シダの名前」で述べた。丘陵地の雑木林などでは、林下の暗いところでよく群落を作っている。姿かたちは典型的なシダそのものである。

 

ベニシダはオシダ科の常緑種で基本的に緑一色である。ではなぜ「紅(べに)」というかというと、資料によると春の新芽が紅いからとのこと。それを知ってから半年、急に思い出して何か所か群落を見て回った。

 

赤茶色っぽいクルリと巻いた新芽が出ているシダは多いが、ベニシダかどうか決め手がない。ネットの画像から、新しい葉が伸びて行くに従って紅色が抜けていき、緑が濃くなっていくようだったので、それを指標に探して見つけた。一旦わかると雑木林の林縁などに多いことが分かった。

 

確かに新芽は紅い。そして紅色→黄緑→緑と色が変わっていく。今回見たシダの中にはほかに似たような性質を持つものはないようだ。地味な存在ながら、春の一時期だけ個性を発揮するシダである。なお若い葉の裏のソーラス(胞子嚢群)も赤い色をしている。

アメリカハナズオウ

あるマンションの入り口付近に植えられていたもの。昨年夏ごろから通りすがりで見ていたのだが、何の木かわからない。高さは5-6mあり、ハート形の葉をつけている。おそらく外国産の園芸種だろうと思っていた。冬は葉を落とし、今頃になって花が咲いた。蝶形花と呼ばれるマメ科の特徴があり、それを手掛かりに調べてようやく正体が分かった。

 

名前の通りアメリカ原産の落葉高木である。マメ科ジャケツイバラ亜科。改めて見てみるとピンク~赤紫の花が美しい。花の長さは1.5㎝くらいで、短い花柄が付いている。葉の展開前に幹や枝の節々から蕾を出し、房状に花を付ける。

 

近縁種で中国原産のハナズオウと比べると花がやや小型で色が薄い。またハナズオウの開花時期はずっと前で早春の花である。名前の由来だが、別種にスオウ(蘇芳)という植物があり、赤系の染料が取れる。花の色がその染料で染めた色(スオウ色)に似ているためとのこと。

アリアケスミレ2022

この場所は、何年も前まだスミレに白い種類があること知らなかった頃に、偶然出会った所だ。あの時は不思議な感じがして、何か貴重な発見をしたようでうれしくなってしまったものだ。同じ白花でも丸っこくてカワイイ感じのマルバスミレと違って、全体にスリムで均整がとれており、楚々としたたたずまいと白磁のような花色が美しい。

 

花は側弁(横向きの花びら)と唇弁(下向き)に紫の条(すじ)が目立つ。花色は紫色に近いものまで変化に富むが、いずれも紫の条がはっきりしている。名称は、花色を月の出ている夜明け(有明)の刻一刻と変化していく空の色に見立てたもの。

 

近場では画像のような白っぽいものが多い。花期は4月中旬から5月中旬で遅い方である。そのため周囲に他の草が伸びているので埋もれてしまっている。早春からのスミレシリーズはこれで終わり。これから花盛りの陽春になる。

カントウタンポポ

 

まだ寒い日はあるものの春本番となってきた。路傍のタンポポも今盛りである。ありふれた花であるが、ひざまずいて見入るとその華やかさに改めて気づく。大きな花束のようになっているとなおさらだ。

 

日本在来種のタンポポは地方によって亜種があり、関東地方と中部地方に分布する種類である。関西地方ではやや花が小ぶりのカンサイタンポポが主になる。一方外来種セイヨウタンポポが急激に分布を広げている。ヨーロッパ原産で、在来種に比べて繁殖力が強く、畑などの雑草として侵略的外来種に指定されている。

 

これらの見分け方のポイントはガクの形である。ガクといっても多くの小花を包んでいるので総苞(そうほう)と呼ばれる。鱗片(りんぺん)が集まったお椀形をしており、それが固く閉じているのが在来種で、開花とともにめくれて反りかえるのが外来種である。慣れてくるといちいち花の裏を見なくても外見で見分けがつく。

 

多摩丘陵でもタンポポは多いが、出会うのは在来種ばかりだ。外来種は大きな道路沿いや一部の畑の周辺などにまだ限られている。おそらく原因は、地形が複雑で種の付いた綿毛を飛ばしても広がりにくいことと、周囲の市街地化が急激に進んで隔離されたためと考えられる。

 

総苞の特徴  上:カントウタンポポ。下:セイヨウタンポポ

ニョイスミレの花

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小さな花の白いスミレ。近場では一番遅く咲く種類である。例年ゴールデンウイーク頃に見かける。今年は少し早い。ニョイ(如意)とは孫の手のような形の仏教で使われる道具の一種だ。長い花茎の先に小さな花がついているところから名付けられたようである。

 

ツボスミレ(坪菫)の名で出ている資料もある。ツボは古語で庭の意味だ。タチツボスミレとは名前が似ているが花の大きさは半分くらいしかない。特徴もかなり異なる。

 

花は側弁(横向きの花びら)基部に毛がある。唇弁(下向きの花びら)に紫色の条(すじ)が目立つ。上弁は反りかえって折れ曲がるためさらに小さく見える。距は短い。葉はタチツボに似たハート形でやや縦長である。

 

北海道から九州に広く分布。今回見つけたのは緑地公園の道沿いで水がたまったような場所だ。丘陵地の谷沿いなど湿った場所で群生することがあり、そういう場合はけっこう見ごたえがある。

 

ウワミズザクラの花

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ソメイヨシノも葉桜になり、いよいよ若葉の季節になってきた。自然の丘陵地を残した広い公園を歩いていると、白いブラシ状の花をたくさんつけた木が目についた。15-20mぐらいの高木で、雑木林の縁から多くの枝を伸ばしている。

 

花は多数の雄シベが長く突き出し全体がブラシのように見える。その下の花びらは5枚で確かにサクラの仲間であることを感じさせる。花の後は赤や黄色のカラフルな実になる。要するにブドウのような房生りのサクランボである。(2021年7月19日付)

 

バラ科で日本全国に分布する。多くの花が集まった房(ふさ)咲きのため普通のサクラとは別系統に属する。よく似たイヌザクラとは花が付いた枝に葉が付く点が異なる。

 

白と緑の花は今頃の爽やかな空気とよく合っていると思う。