ベニシダは近場ではごく一般的なシダであることは以前「シダの名前」で述べた。丘陵地の雑木林などでは、林下の暗いところでよく群落を作っている。姿かたちは典型的なシダそのものである。
ベニシダはオシダ科の常緑種で基本的に緑一色である。ではなぜ「紅(べに)」というかというと、資料によると春の新芽が紅いからとのこと。それを知ってから半年、急に思い出して何か所か群落を見て回った。
赤茶色っぽいクルリと巻いた新芽が出ているシダは多いが、ベニシダかどうか決め手がない。ネットの画像から、新しい葉が伸びて行くに従って紅色が抜けていき、緑が濃くなっていくようだったので、それを指標に探して見つけた。一旦わかると雑木林の林縁などに多いことが分かった。
確かに新芽は紅い。そして紅色→黄緑→緑と色が変わっていく。今回見たシダの中にはほかに似たような性質を持つものはないようだ。地味な存在ながら、春の一時期だけ個性を発揮するシダである。なお若い葉の裏のソーラス(胞子嚢群)も赤い色をしている。