植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ボダイジュ(菩提樹)

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小雨の中、前回の寺院の庭をそぞろ歩いていると爽やかな甘い香りがする。探すとこの木であった。地味な黄色の花がどっさりと付いている。調べると菩提樹であった。考えてみるとここはお寺だ、有っても不思議はない。よく境内の清浄な雰囲気と調和している。

 

高さ3-4mのこんもりした木で、幹が白くて筋がある。葉はポプラに似た三角形で周囲に深い鋸歯(ギザギザ)が目立つ。花穂にヘラ状の葉のような総苞(花の集まりを包むガク)が付いているのが特徴。個々の花は緑がかった5枚のガクに5枚の黄色い花びらがあり、中央に突き出した雌シベの周りをオレンジ色の雄シベが囲んでいる。

 

「ボダイジュ」はじつは何種類もある。お釈迦様がその樹の下で悟りを開いたのがインドボダイジュ(クワ科)。欧州で並木などになっており、シューベルトの曲で有名なのが西洋ボダイジュ(リンデン、アオイ科シナノキ属)だ。近縁で日本にあるボダイジュは、仏教が中国に入ってきとき熱帯性の本来のものがなく、中国原産の葉の形が似たシナノキ属の木を寺に植えたものが入ってきた。

トキソウの花

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この花は、横浜市郊外のある禅宗寺院の庭に植えられていたものだ、小雨の中、目立ち過ぎず楚々とした風情である。

 

名前は花の色が朱鷺(トキ)の羽根の色であるトキ色に近いことによる。草丈は30㎝以上あり華麗にスラリと伸びた姿はまさに朱鷺である。

 

東アジアに広く分布するランの仲間。日本全国の高原や湿原などに自生するが、鳥の場合に似て自然のものは乱獲による絶滅危惧種である。何輪も咲いていると、トキの群舞はこんな感じだったのかと思う。

6月の木の実2021

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近場の公園。台地に切れ込んだ谷戸の奥に水が湧いており、その周りに里山の樹林が残されている。なぜかキイチゴのたぐいが集中しているゾーンがあり、毎年見に行っている。

 

左上 ニガイチゴ:透明な赤い宝玉のような色が美しい。苦みがあるはずだが、鳥に食べられたのかあまり残っていない。そういえば近くにあったモミジイチゴの実は残っていなかった。ナワシロイチゴは実になるまでまだしばらくかかりそうだ。

 

右上 カジイチゴ:3mぐらいの樹高で、キイチゴの仲間では大柄な種類である。画像の果実はちょっと未熟な感じで、ほぼ残っている。熟すとこれもすぐ無くなってしまう。

 

左下 マユミ:先日花を紹介したが、もう奇妙な形をした袋状の実に変わっている。単独で見ると虫こぶではないかと思ってしまう。秋には色づいてまた変貌する。

 

右下 イロハモミジ:カエデ系の木の実は、羽根の付いた種が二つくっ付いた形をしている。もう少しすると乾燥して柄から外れる。くるくる回りながら落ちてくるのを見たことがある。種が遠くまで蒔かれるように、プロペラの羽根ような形に自然になっていることが不思議である。

赤と黒のカメムシ

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街中の道路沿いにある切れ端のような公有地は花壇になっていることが多い。世話は近隣の有志の方がボランティアでされていて、よく整備されたものを見ると町の住民の意識の高さが伝わってくる。

 

カメムシは苦手だが、これだけ目立つと思わず見入ってしまう。赤いなめし皮に黒い線を引いたようなツヤと質感だ。翅のふちからはみ出している腹部は、よく見ると点々模様である。模様が筆で墨黒々と書いたようなタッチであるのが面白い。

 

調べるとアカスジカメムシと言い、そのまんまの名前だ。初夏に現れ、幼虫がセリ科植物を食草にしているのでそこで見かけることが多い。

 

背後でボケている白い花はオルレア、園芸品種名ホワイトレースという。虫がいるのは花が終わった後の果穂で、トゲトゲの多い実に変わっている。ヨーロッパ原産のセリ科植物である。虫には思わぬ生活の場になっているようだ

ナラ枯れ:カシナガトラップ

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住宅地の中に残された雑木林。周辺の人々が下草刈りなど保全活動を行っているので里山特有の植物などが残っている。最近行ってみると画像のようなものが設置してあった。

 

 この雑木林は主としてコナラというドングリの木からなっており、何本かの幹にビニールの袋のようなものが取り付けられていた。「フラス」と書かれたテープが張りつけられた木もあった。ポスターには「カシナガ捕獲大作戦」とある。以前から耳にしていた「ナラ枯れ」がついに近場にも及んだことを実感した。

 

ナラ枯れ」とは、ナラ菌(カビの一種)によるコナラなどカシ科の樹木の大量枯死をいう。カシノナガキクイムシ(樫の長木食い虫、通称カシナガ)という5㎜ぐらいの小甲虫が媒介する。特に日本海側に広く分布するミズナラが優先する森林で被害が激甚で、森林環境の悪化と生態系への悪影響が心配されている。だいぶ以前になるが、マツノマダラカミキリが媒介する松枯れによって、西日本のアカマツ林が全滅し、山林の様子が一変してしまったことを思い出した。

 

カシナガはコナラなどの古木の中を食害しており、今頃成虫が樹皮に穴をあけて飛び出す。その時体に菌が付着しており、他の木に移るとき感染させる。それをトラップ(わな)で捕まえて減らそうというわけである。この虫がいる木は食べた木クズ(フラス)や糞が外に出ており、要注意だ。

 

松枯れの時は殺虫剤をヘリで撒いたりしたが、木の中にいる虫には効果がなく、他の生物がやられて生態系が一気に危機に瀕した。その反省から、あの手この手の方法が試みられているようだ。効果が上がってナラ枯れが収まってくれることを切に願う。

ヤマボウシの花

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今頃花で真っ白になっている少し高い木はだいたいこれだ。少し前ならミズキだった。横に伸びる枝から垂直に花序が伸びて、上向きの花がずらりと並ぶ。画像はたまたま民家の庭にあった小さな木で見たもの。花が大きくなっていく様子が表れている。緑色の水の中からクラゲのような生物が浮かび上がってくるようで面白い。花びらは最終的に4-5倍に大きくなり、真っ白になる。

 

ヤマボウシの花はじつは中心の丸い部分である。小さな花が多数集まっており、咲くと黄色くなる。4枚の白い花びらに見えるものは総苞片と呼ばれるもので、花の集合を包むガクのようなものである。

 

ヤマボウシという名前は、丸い花序を比叡山(ひえいざん)の僧兵の頭、総苞片を白い頭巾に見立てたものという説がある。要するに「山法師(やまほうし)」がなまったものだ。真偽はともかくそう考えると覚えやすい。

 

ミズキ科の小高木で、本州以南の山地に自生。街中でもよく植えられ、同じ科で近縁のハナミズキが病気に弱いため、最近はこの花に置き換えられることが多い。

梅雨どきの黄色い花

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今年は季節の進むのが早くもう梅雨のような気候になっている。今頃、民家の庭や公園の植え込みなど至る所で黄色い花を次々とつけている木がある。キンシバイとビヨウヤナギである。どちらもオトギリソウ科の樹高1~1.5mの小低木で、外見はよく似ている。実際、同じものと思っていた。

 

キンシバイ(金糸梅)は中国原産で、江戸時代に渡来した。花は梅のような五弁で、大きく開かず、枝先に垂れる。雄シベは花弁より短い。葉が対生(2枚が向き合う)でだいたい同じ角度で並ぶ。

名前は雄シベが金の糸のように見えるから。それをいうならば、ビヨウヤナギの方がふさわしいように思う。見た目からだと間違ってしまう。類縁の西洋キンシバイは雄シベが長く、よりビヨウヤナギに似ている。

 

ビヨウヤナギ(画像下)も中国原産で、日本では古くから栽培されている。花全体が山吹色でキンシバイより大きな径5㎝ぐらいの花が上向きに咲く。雄シベが花弁より長い。葉は十字対生(対生の葉が直角に続く)で、形がヤナギに似ている。ビヨウはビョウとも、漢字で美容とか未央とか書かれる。中国では金糸桃と呼ばれている。

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これらの植物はあまり大きくならずに見栄えがするので庭植えにピッタリだ。そのため色々な品種が作り出されていてややこしい。どんな植物でも園芸種はちょっと苦手である。識別が難しいのと、狙って作ったのだから大きくてきれいなのは当たり前でしょ、と思ってしまうためである。(偏見)