いつもの都市河川沿いの道を歩くと広い高速道路の高架下を通る。そこは金網で囲われた空き地になっていて、直接日光や雨がほとんど当たらないので普通の植物は生えていない。そんな薄暗くて乾燥した場所に高さ1mぐらいの茂みを作っていた植物である。
これまでは鋸歯(周囲のギザギザ)のある丸い葉ばかりが茂っていた。最近一斉に白いモールの棒のような花穂を伸ばして急に目立つようになった。近くで見ると、細い棒状の花序に白い毛の生えた玉状のものが並んでいる。これは花びらのない小さな雌シベの集合体で、毛は雌シベの先端である。雄花は花序の根元につくそうだが、ざっと見たところ雌花しかなかった。
イラクサ科カラムシ属の多年草。日本全国に分布する。よく似たカラムシとは、葉の付き方が対生(1か所に2枚向き合って付く)である点が異なる。カラムシと同様に、かつては茎の繊維が糸として利用され布が織られた。名前はカラムシの別名マオ(苧麻)にヤブ(藪)が付いたもの。
林縁やヤブの中など日陰で雨が当たらない場所を好む性質から、都市の真ん中に生育の場所を見つけたのであろう。逆に、かつてはそこにヤブがあり、後で高速道路ができたため他の植物が枯れてこれだけ残ったのかもしれない。