街ではもうツツジが満開である。植え込みや庭で見かけるのは、最近はオオシマツツジやミツバツツジが多い。一方画像のヤマツツジは日本の野生ツツジの代表で、近場では丘陵地の林縁などで見ることが多い。
朱色に近い花が黄緑色の新しい葉に映えて美しい。これを見ると杜牧の漢詩「江南の春」の一節「千里鶯(うぐいす)啼(な)いて緑紅(くれない)に映ず 水村山郭酒旗の風…」を思い出す。読むと中国のスケールの大きい自然とのどかな農村風景が浮かんでくる。ふと気が付くとその世界に入り込んで、酔って春風に吹かれている自分がいる、といった趣である。きっと向こうの花と緑はヤマツツジではないのだろうけど、なぜかイメージは一致している。今の季節の空気感も影響しているのだろうか。
政府では漢文の時間をなくすことが検討されていると聞く。そういうことを言う人はこの詩を一度読み返してみればよいと思う。