多摩丘陵の一角の日当たりのよい草地。入り込んだ潅木やネザサなどが刈られて手入れされ、かつての里山が再現されている。まだ枯れた草が多いが、そろそろ里山特有の草花が顔を出している。この植物は背が低く小型ながら、独特の形をした赤紫の花が目を引く。
花は左右1.5㎝。5枚の紫色のガクのうち左右の2枚が大きく広がり、中央の筒状の花弁の先の色が濃くなって下側の花弁の先が白っぽく房状に噴き出している。海の軟体動物のような形だが、鮮やかな色のため悪い印象はない。なお、中央右の濃い紫色の砲弾型のものはツボミである。
名前は、小さくて萩(マメ科)を思わせる花だから。しかし、日本では珍しいヒメハギ科ヒメハギ属である。全国の丘陵地などに自生する在来種だが、近場で生えているところは1か所しか知らない。手入れされない里山では、ネザサや外来種の植物に追いやられてあっという間に消えてしまうものだからだ。