神奈川県南西部を流れる酒匂(さかわ)川は、丹沢山地西側を構成する岩石を集めて流れている。河原の石を調べると、この山地の成り立ちがわかる。
画像左は、丹沢を代表する岩石である緑色凝灰岩である。海底火山が噴出した火山灰などが固まったものだ。白い粒は火山の熱水の作用でできた沸石だ。
一方画像右は、凝灰岩が圧力を受けて変成し、構成成分が一定方向に並んで薄層が重なったような構造(片理という)になったもので、緑色片岩と呼ばれる。沸石は押しつぶされて白い線のように見える。色合いがほぼ同じで、結晶も見られないことから、変成鉱物は生じていないようである。もろい岩石なので上流の露頭以外では、ほとんど見られない。
緑色片岩がマグマの熱によりさらに変成したものが、角閃岩である。表面は緑色片岩のなごりの緑白の筋が見えるが、片理はなく固い岩石だ。新たに緑色の鉱物である角閃石や緑簾石が生じて、その結晶がキラキラ輝いて見える。
この三種の石は、神奈川県西部の大地の成り立ちを示している。
1500万年前、はるか南方の海底火山の噴火でできた凝灰岩の島(海山)が、フィリピン海プレートに乗って北上し日本列島に衝突した。これが陸のプレートの下に潜り込む時、一部が列島に付加して、強い圧力で押し付けられ緑色片岩ができた。その後、上昇してきたマグマの作用でさらに変成し、角閃岩になったと考えられる。
拾ってきた石をひねくりながらこんなことを考えていると、壮大過ぎて時を忘れてしまう。