植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

カモガヤ

イネ科の多年草。草丈1m以上になる近場では大型の雑草だ。イヌムギなどより少し遅く今頃、路側や空き地で盛んに繁茂している。花粉症の原因の一つ。困ったものである。

 

小穂は3~5個の白緑色の小花から構成される。花穂は下に行くほど花柄が長くなり、全体に三角形に見える。夏草の草むらが遠目に白っぽい感じになっているとこの草であることが多い。よく見ると大量の雄シベを出している。

 

英名オーチャードグラスとして知られる牧草。明治期に導入され、今は広く野生化している。果樹園の草という意味だが、和名のカモガヤ(鴨茅)は、英語の別名コックズフットグラス(ニワトリの足の草)をダック(カモ)と間違えたものといわれる。

キツネアザミの花がら

草むらの中から枯れた花のようなものがいくつも突き出している。よく見ると花びらに当たるところが金属的に光っていて金色に見える。拡大するとなかなか美しい。一部綿毛が残っており、以前の記憶から考えてキツネアザミの花後の姿と思われる。

 

花がらとは咲き終わった後の萎れた花のことをいう。普通は実になるか、枯れていつの間にか無くなってしまう。アザミなどキク科の仲間は綿毛の付いた種を飛ばすので、比較的長く残っている。

 

半月ほど前はアザミに似た赤紫色の花を咲かせていた。その後白っぽい綿毛に変わり、それが飛んでしまった後、鱗片状の総苞(多数の小花を包むガクに当たるもの)が残ってドライフラワーのようになったもののようだ。キツネアザミは素朴な味わいのある花だが、花後の方が派手になるのは不思議な感じがする。

カラフルな雑草

道端のアスファルトのすき間から生えていた雑草2種。立ち止まって観察してみると、紫と赤色の取り合わせがなかなか良い。

 

紫の花はヒナキギキョウだ。キキョウ科の在来種で、草丈は30㎝くらい。先端に一輪だけ花を付けるのが特徴。茎の途中に並ぶのは閉鎖花で開花せずに種を付ける。径1.5㎝の小さな花だが、十本以上並ぶと紫色が美しい。

 

一方赤色はアメリカフウロである。フウロソウ科外来種。春から夏にかけて深く切れ込んだ特徴的な葉を茂らせるが、意外に上品な花を咲かせた後、実を付けるとき秋に限らず紅葉する。実は尖った針のような形をしており、真っ黒になるが、その前にガクが真っ赤になる。木々の紅葉と同じように日当たりが良いところの方が色鮮やかなようだ。

ナツグミ

丘陵地の林縁などでよく見られる低木である。葉や実に白い毛が細かい斑点状についており、全体に銀白色を帯びて見えるのですぐわかる。枝にも茶色や銀白色の鱗片がある。枝にトゲがあるので注意。

 

グミ科で日本の野山に自生。初夏の今頃目立つ赤い実がなるのでナツグミという。花は3,4月頃咲く。花びらはなくクリーム色の筒状のガクの先が4裂して花のように見える。甘い良い香りがする。他に実がなる時期によりアキグミやナワシログミなどの種類がある。

 

「グミ」は、トゲ(刺)のことを方言で「グイ」と言い、トゲのある木の実で「グイミ」が訛ったものとされる。見た目がなんとなく似ているが、お菓子のグミとは関係がない。

 

画像は民家の庭先に植えてあったもの。実が2㎝程度と大きいので、選抜されたダイオウグミ(ビックリグミ)という園芸種であろう。自然の状態ではこんなにドッサリなるのは珍しい。実は食べられるが、渋みやえぐみがある場合があり、もっぱら観賞用である。

ハクチョウゲ(白丁花)

これも民家の生け垣などでよく見かける。花が小さいため存在感が薄いが、近づいてよく見るとなかなか凝った花である。ラッパ型の花は直径1㎝くらい。花弁は5-6裂してフリルが入っている。色も純白ではなく薄っすら赤紫の模様がある。ずっと小型だがツツジの花に似ている。

 

名前の由来は花の形から。横から見ると「丁の字」型をしている白い花というわけである。日当たりが良いと白い花をどっさり付けるので、英名はジューン・スノー(6月の雪)という。

 

アカネ科の常緑小低木で樹高はせいぜい1m程度。原産地は東南アジアだが、耐寒性があり日本でも北海道以外では育つ。基本種は緑葉で薄い藤色の花。画像のものは葉の周囲に白い班(ふ)が入っている。

イボタノキの花

丘陵地の雑木林の林縁に多い。樹高2-3mで枝は分岐せずまっすぐに伸びる。これにほぼ同じ大きさ(長さ3-5㎝)の長卵型の葉が対生(同じ場所から向かい合って付く)する。葉は黄色っぽい緑色でツヤがなく柔らかい。

 

モクセイ科イボタノキ属の落葉低木。花は白色で密集して咲く。ラッパ形で四裂し、直径は8㎜くらい。2本の雄シベが突き出す。花がよく似ているネズミモチは同属である。

 

イボタノキという奇妙な名前は、「疣取(いぼと)りの木」が語源。この木につくイボタカイガラムシから採れる蝋(ろう)が昔いぼ取りに使われたことによる。

 

匂いは強いが生臭い感じであまり良いものではない。ただ、梅雨入り前の今の時期、多摩丘陵を特徴づける香りのひとつであることは間違いない。

 

トウオガタマ(カラタネオガタマ)

モクレン科の常緑低木。樹高3-5m。民家の庭先や神社などで見かける。この画像の木は多摩丘陵にある自然公園の雑木林内にあったもので野生化している。日陰なので花は少ないようである。

 

直径2-3㎝のクリーム色の花は赤紫の縁取りがあり、中心部に同色のぼかしがある。なかなかオシャレな感じだ。時間とともに色が濃くなる。花弁は6枚で完全には開かず、半開の状態のままである。バナナのような甘い香りを放ち、花の色もバナナを思わせる。

 

名前の「トウ(カラタネ)」は「唐(唐種)」で、中国原産を意味する。明治初期に渡来した。また「オガタマ」は、日本在来種にオガタマノキという植物があり、その近縁であることによる。オガタマは「招霊(おぎたま)」が転じたものとされ、神の依り代(よりしろ)として神事で使われた。