植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ロウバイ

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 明けましておめでとうございます。

 2019年年頭を飾るのは、我が家の狭い庭のロウバイの花である。蝋梅という名のように、ロウ細工のような透明感のある黄色の花で、枝ぶりが梅に似ている。しかも梅より早く真冬に咲いて、甘い香りを放っている。

 膨らんだつぼみがいくつか落ちていて、誰がやったかと思っていた。ある時近づくとバサバサと飛び立ち、花を食べに来た鳥の仕業とわかった。今の時期、鳥も必死なのであろう。でもおいしくなかったようだ。

 中国原産。日本人には派手に見える色と形だ。しかし自由奔放に伸びる枝と相まって、色彩の乏しい真冬の景色の中で、その佇まいは不思議に調和がとれている。好きな花だ。

 今年も色々なところで中国の人を見ることになるのかなと思う、新年である。

 

丹沢山地の石灰岩

 

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 以前「丹沢の有孔虫化石」(2018-09-07)で、丹沢山地石灰岩が、1500万年前にはるか南にあった火山島にできたサンゴ礁の化石であることを述べた。

 今回は、さらにこの石灰岩の特徴についてみてみたい。

 画像上は、酒匂川支流の一つで見つけたものである。石灰岩は比較的柔らかい石で、流れているうちにすぐに削れて小さくなる。そのため川の本流の河原で見かけることはまれである。酸性の水に溶ける性質があるので、近年の酸性雨の影響もあるかもしれない。

  一見して岩片や砂が大量に入っていることがわかる。赤茶けた砂のせいで全体に赤黒く見えるのがこの石灰岩の特徴の一つである。他の産地のものは、一般に青みがかかった灰白色(セメントの色)である。また、この岩片や砂は色や形から見て火山岩の破片や火山砂と思われる。

 白っぽい貝殻のような色調のものが見えるが、川を流れてくるときにあちこちにぶつかってできた無数の白い跡のため、はっきりしない。そこで、水で濡らしてみると、画像下のような模様が浮き出してきた。

 

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 貝殻やサンゴの破片と思われるものがぎっしりと詰まっている。元の形が残っているのは、堆積したのが1500万年前と比較的新しいからである。この中に有孔虫の化石が含まれていて、化石編年からできた年代が特定された。ごくまれにオウムガイや熱帯特産の貝の化石が入っているとのことだが、残念ながらこの石では形がはっきりした化石は認められなかった。

 学生のころ沖縄の離島で見た、サンゴの破片でできた白い海岸を思い出した。火山の爆発でサンゴ礁に噴出物が降り積もる図は、何ともロマンに満ちたイメージである。

丹沢の変成岩

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 神奈川県南西部を流れる酒匂(さかわ)川は、丹沢山地西側を構成する岩石を集めて流れている。河原の石を調べると、この山地の成り立ちがわかる。

 

 画像左は、丹沢を代表する岩石である緑色凝灰岩である。海底火山が噴出した火山灰などが固まったものだ。白い粒は火山の熱水の作用でできた沸石だ。

 一方画像右は、凝灰岩が圧力を受けて変成し、構成成分が一定方向に並んで薄層が重なったような構造(片理という)になったもので、緑色片岩と呼ばれる。沸石は押しつぶされて白い線のように見える。色合いがほぼ同じで、結晶も見られないことから、変成鉱物は生じていないようである。もろい岩石なので上流の露頭以外では、ほとんど見られない。

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  緑色片岩がマグマの熱によりさらに変成したものが、角閃岩である。表面は緑色片岩のなごりの緑白の筋が見えるが、片理はなく固い岩石だ。新たに緑色の鉱物である角閃石や緑簾石が生じて、その結晶がキラキラ輝いて見える。

 この三種の石は、神奈川県西部の大地の成り立ちを示している。

 1500万年前、はるか南方の海底火山の噴火でできた凝灰岩の島(海山)が、フィリピン海プレートに乗って北上し日本列島に衝突した。これが陸のプレートの下に潜り込む時、一部が列島に付加して、強い圧力で押し付けられ緑色片岩ができた。その後、上昇してきたマグマの作用でさらに変成し、角閃岩になったと考えられる。

 拾ってきた石をひねくりながらこんなことを考えていると、壮大過ぎて時を忘れてしまう。

石の花:頑火輝石(がんかきせき)

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 これも今度の池袋ミネラルショーで手に入れたもの。野の花を思わせる鉱物結晶の一つである。

 耐火性能に優れているので、「頑火」と名付けられた輝石の仲間である。「菊寿石」の名で水石として鑑賞されているそうだ。

 鉱物の大きな結晶は母岩の空隙にできることが多いが、これは岩石の中で結晶が放射状に集合して球状になっている。そのため割ると黒い母岩をバックに花火や菊の花のような形が現れる。

 結晶は少し緑がかったクリーム色で、絹糸のような光沢がある。私は以前紹介したアキノノゲシの花に印象が似ていると思う。

石の花:方沸石(ほうふっせき)

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 水晶みたいだが全く異なる鉱物で、火山の熱水の作用でできる沸石の一種である。溶岩の空隙などによく結晶ができている。丸っこい結晶の結晶面を花びらに見立てると、連なって咲いている植物の花にも見えてくる。

 画像は今年のミネラルショー(池袋)で入手したものだ。結晶は上下にひしゃげた偏菱二十四面体である。岩手県産で、細かいクラックが入っていて透明感は乏しいが、直径は15ミリもある。一つの結晶面が不等辺四角形であることは、反射面の形でわかると思う。歪な四角形だけで結晶ができるのは不思議な感じがする。

 

 偏菱二十四面体は英語でトラペゾヘドロンという。私の好きなH.P.ラブクラフトのSF(コズミックといった方が良い)ホラー小説に、漆黒の「輝くトラペゾヘドロン」というものが出てくる。あらゆる時空に繋がる窓であり、「闇にさまようもの」を召喚できるアイテムだ。

 この結晶の造形は、そのような魔力を秘めていても不思議はないと感じさせるものである。

季節はずれのバラ

 

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 5月13日付で、ウチの小さなバラの話を書いた。それが、この寒いのに結構花をつけている。例年チラホラぐらいは秋に花をつけるのだが、まさに狂い咲きである。

 12月の初めまで暖かい日が続いたせいだと思うが、今年の猛暑や度重なる台風などが影響しているのかもしれない。

 花の色は春の時よりかなり濃いピンクになっている。花もイジケタ感じだ。しかし、なんとなく「和」の風情があって、これはこれでなかなかきれいだと思う。

センリョウ(千両)の実

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 里山公園の管理棟の近くに植えてあったものだ。今頃からたくさんの赤い実をつけるので、よく目立っていた。冬中、葉も実もつけているので、冬の彩りとして重宝されているようだ。

 葉も実もよく似た植物が何種類もあることが知られている。それぞれマンリョウ(万両)、千両、百両、十両である。一両というものもあるそうだ。木の大きさと実の多さで区別されるが、それぞれ別種の植物である。どれも実を金貨(小判)に見立てているので景気が良い名前だ。

 実を言うと、この木は「ヤブコウジ」という名札がついていた。これは十両の正式名なのだが、どうも木の大きさが違うようだ。また、マンリョウヤブコウジは実が下向きに付くため、葉の下になり目立たない。一方、センリョウは葉の上に上向きに実がつく。そのため画像の植物はセンリョウとさせてもらった。

 クリスマス飾りの定番であるヒイラギも赤い実をつける。リースの赤い実はだいたいこれである。クリスマスと正月の飾りが、洋の東西にかかわらず、似たような葉と実の植物を用いているのは面白い。

 暗い冬空に負けない赤い実は、メデタイ感じがするのは確かである。