水晶みたいだが全く異なる鉱物で、火山の熱水の作用でできる沸石の一種である。溶岩の空隙などによく結晶ができている。丸っこい結晶の結晶面を花びらに見立てると、連なって咲いている植物の花にも見えてくる。
画像は今年のミネラルショー(池袋)で入手したものだ。結晶は上下にひしゃげた偏菱二十四面体である。岩手県産で、細かいクラックが入っていて透明感は乏しいが、直径は15ミリもある。一つの結晶面が不等辺四角形であることは、反射面の形でわかると思う。歪な四角形だけで結晶ができるのは不思議な感じがする。
偏菱二十四面体は英語でトラペゾヘドロンという。私の好きなH.P.ラブクラフトのSF(コズミックといった方が良い)ホラー小説に、漆黒の「輝くトラペゾヘドロン」というものが出てくる。あらゆる時空に繋がる窓であり、「闇にさまようもの」を召喚できるアイテムだ。
この結晶の造形は、そのような魔力を秘めていても不思議はないと感じさせるものである。