植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

海の近くの植物:観音崎

神奈川県横須賀市に属する観音崎三浦半島東京湾側の突端にある。かつての軍港横須賀の入り口に当たり永年一般人の立ち入りが制限されていたので古来の海岸林が残った。現在は整備されて美しい公園になっている。6月下旬の週末、植物の先生がガイドのフットパスに参加した。

 

海の近くは温暖で陽光に恵まれているが、常に潮風と台風などの脅威にさらされており、塩害で普通の植物は生育が難しい。そのため海の影響を受ける海岸林の植物相は独特である。

 

ガクアジサイ(額紫陽花、画像上)

鬱蒼とした海岸林の縁(へり)の至る所で見られた。アジサイ科で園芸種アジサイの原種である。日本原(特)産。中央の青紫の両性花の周囲を薄青い装飾花が絵の額(がく)のように取り巻いていることが名前の由来である。潮風に強く丈夫。自生のものだけでなく、植えられたものが混じっているようである。

 

マサキ(柾、正木、画像下)

ニシキギ科の常緑低木。葉の長さは5-7㎝。庭木や垣根に使われる。塩害に強いので潮風の当たる場所でも生育する。花期は6-7月。花びらは4枚で直径7㎜ぐらいの花を多数つける。名前の由来は諸説あるが、年中青い葉を付けていることから「真青木(まさおき)」が訛ったものという。

 

トベラ(扉)

海浜の自然林に多い樹種である、トベラ科の常緑低木。花期は5月下旬。マサキに似た緑白色の小さな花を付ける。ただし花びらは5枚である。枝葉を切ると悪臭を発するため、節分に鬼を払う魔除けとして扉(とびら)に掲げる風習があった。そのため名前の由来は「扉の木」が訛ったものと言われる。本州以南の暖地の海岸に分布する。

 

ハマヒサカキ(浜姫榊)

モッコク科の小高木。塩害に強く丈夫だが、成長が遅くあまり大きくならない。そのため上記2種類とともに公園樹や生け垣などに用いられている。これらはみな似ており花か実がないと区別が難しい。

 

イヌビワ(犬枇杷

クワ科イチジク属の落葉小高木。名前に「イヌ」が付くと役に立たないという意味だが、実は食べられるそうである。しかもビワというよりは小さなイチジクだ。海沿いの林の中に多い。

 

ナギイチゴ(柳苺)

色彩に乏しい濃い緑の林の中でオレンジ色の実が異彩を放っていた。甘く食用になる。イラクサ科の落葉低木で、日本では関東以西の暖地の海岸付近に自生する。名前はヤナギのような葉でイチゴに似た実を付けるという意味だ。