今の時期、近場の里山を歩いても夏草が繁茂しているばかりでめぼしい花はない。咲いているのはヤブランやキンミズヒキぐらいだ。木陰でもただ蒸し暑くセミの声がうるさい。ただヒグラシの寂しげな声が聞こえ、オミナエシが咲き始めているのを見ると秋の兆(きざ)しを感じる。
そんな時、雑木林の林縁に点々と朱色のこの花がみられた。ヒガンバナの類縁だが、花期は真夏の8月。花びらは6枚であまり反り返らない。ヒガンバナより黄色味が強いが沈んだ色あいだ。素朴でシブい印象を受ける。
ヒガンバナ科の多年草。本州、四国、九州に分布。ヒガンバナと同じように球根を持つ。春先から葉を出すが夏には枯れるため、何もないところに花だけが突然現れる。キツネに化かされたようだという気持ちは分かる。美しいが全草に毒があるので注意。