今年もそろそろキンランとギンランが咲く季節となった。待ち遠しい。
初めてキンランと出会ったのは、一昨年の春のある時期に、近場の雑木林の中を歩いていた時である。薄暗い林床(りんしょう、樹下の地面)に、鮮やかな黄色だが見落としてしまいそうな小さな花が咲いているのに気がついた。遠目にはアブラナみたいである。近づいてよく見ると違う。葉が単子葉(稲みたいに縦に葉脈があるもの。アブラナは網目状の葉脈で双子葉)だ。花の形も変わっている。おや、この形はひょっとすると蘭の仲間か?
調べたところキンラン(金蘭)というものだった。実はそんな植物があることは知らなかった。再度観に行ったが、詳細に観察すると実に美しい。10個ほど小さな花がひとまとまりになっているが、その一つ一つがちゃんと蘭の花の形をしている。それも遠慮気味に開ききっていない感じがまたよい。そして一番の魅力はその透明感のある、輝くような黄色だ。
ネットによると、昔は里山で普通にみられたが、環境破壊と乱獲で、今や絶滅危惧種(環境省の絶滅危惧II種)だそうである。この蘭の仲間は、菌根菌(きんこんきん)という樹木の根に寄生(一方的に栄養を奪う関係)する菌類(キノコの仲間)と共生(互いに栄養を与えあっている関係)して、栄養を受け取っている。そのため、光合成があまりできない薄暗い林床でも生きていける。この環境には普通の植物は入り込めない。但し、余り鬱蒼として真っ暗だとやはり育たない。
かつて里山の林の中は、農家の芝刈りや落ち葉取り(燃料や田に入れて肥料とする)でよく手入れされていたので、キンランの生育には絶好であったようだ。手入れがされなくなったことで、残念ながら今や里山は荒廃の一途である。後でわかったことだが、この緑道は、周辺の有志の方が、下草刈りなど手入れをされているとのことであった。(続く)