植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ヒメジョオンなのか?

街中でもよく見かけるヒメジョオン。花期は6~10月とされているが、8月の今改めて見てみると6月頃より花が小さくなっているように感じる。計ってみると、直径2㎝ぐらいあったものが、今は1.7~1.5㎝しかなく、中には直径1.2㎝程の小さな花をたくさん付けているものもあった。草丈も1mほどだったものが小さくなっているようだ。季節的な変化だろうか?

花は黄色い中心部に対して周辺の花びらの部分が短くなっている。6月頃は花びらの方が長かった。また、葉も幅があって粗い鋸歯(周辺のギザギザ)が付いたものだったのが、細い舟形で鋸歯がほとんど目立たないものに変わっている。もともと茎の上の方に着く葉は小さい舟形だったが、根元の方までそうなっている。本当に同じ植物なのか?

 

最近ネットで調べていて、ヒメジョオンには花や葉が小型の類縁種があることを知った。北米原産の帰化種ヘラバヒメジョオンとヤナギバヒメジョオンである、それぞれヘラ形と柳に似た葉の形から名前が付いている。

 

近場を見て回ると、典型的なヒメジョオンも多いが、ヘラバやヤナギバと思われるものも結構あった。ただ特徴はいくつかの点で一致するものの異なるところもあり、今一つ決め手に欠けた。自然交配を繰り返すうちに、多様な雑種が生じているのだろうか。

キツネノカミソリ(狐の剃刀)

今の時期、近場の里山を歩いても夏草が繁茂しているばかりでめぼしい花はない。咲いているのはヤブランキンミズヒキぐらいだ。木陰でもただ蒸し暑くセミの声がうるさい。ただヒグラシの寂しげな声が聞こえ、オミナエシが咲き始めているのを見ると秋の兆(きざ)しを感じる。

 

そんな時、雑木林の林縁に点々と朱色のこの花がみられた。ヒガンバナの類縁だが、花期は真夏の8月。花びらは6枚であまり反り返らない。ヒガンバナより黄色味が強いが沈んだ色あいだ。素朴でシブい印象を受ける。

 

ヒガンバナ科多年草。本州、四国、九州に分布。ヒガンバナと同じように球根を持つ。春先から葉を出すが夏には枯れるため、何もないところに花だけが突然現れる。キツネに化かされたようだという気持ちは分かる。美しいが全草に毒があるので注意。

ナンバンギセル(南蛮煙管)

公園を歩いていてそろそろススキの葉が伸びてきたなと思っていたら、その根元に突然のように現れた。フラミンゴの群れが頭に浮かんだ。この造形と赤紫色の印象は強烈だ。草叢から15㎝ぐらいの花茎だけが何本もヒョロリと出ている。探しても葉はなく、葉緑素もない。ススキの根から栄養を得ている寄生植物である。

 

ハマウツボ科の一年草。ススキなどイネ科の植物に寄生する。花期は7-8月。以前一度取り上げた時は9月で、枯れ残ったような状態だった。今回も少し萎(しお)れた感じだが、鞘が枯れておらずマダラの模様がわかる。

 

稲につくと害草扱いされるらしい。近場では見かけることすらまれである。都市化による環境の変化に弱いのかもしれない。見つけてもそっと愛(め)でるだけにしてください。

ヤブマオの花

いつもの都市河川沿いの道を歩くと広い高速道路の高架下を通る。そこは金網で囲われた空き地になっていて、直接日光や雨がほとんど当たらないので普通の植物は生えていない。そんな薄暗くて乾燥した場所に高さ1mぐらいの茂みを作っていた植物である。

 

これまでは鋸歯(周囲のギザギザ)のある丸い葉ばかりが茂っていた。最近一斉に白いモールの棒のような花穂を伸ばして急に目立つようになった。近くで見ると、細い棒状の花序に白い毛の生えた玉状のものが並んでいる。これは花びらのない小さな雌シベの集合体で、毛は雌シベの先端である。雄花は花序の根元につくそうだが、ざっと見たところ雌花しかなかった。

 

イラクサ科カラムシ属の多年草。日本全国に分布する。よく似たカラムシとは、葉の付き方が対生(1か所に2枚向き合って付く)である点が異なる。カラムシと同様に、かつては茎の繊維が糸として利用され布が織られた。名前はカラムシの別名マオ(苧麻)にヤブ(藪)が付いたもの。

 

林縁やヤブの中など日陰で雨が当たらない場所を好む性質から、都市の真ん中に生育の場所を見つけたのであろう。逆に、かつてはそこにヤブがあり、後で高速道路ができたため他の植物が枯れてこれだけ残ったのかもしれない。

カラスウリの花:朝

ウリ科で、原産地は中国・日本。林の中やヤブなどで他の木に絡みついて成長する。名前の由来は、食べられない(役に立たないという意味)からとかカラスが好むからとかいわれる。秋の朱色の実は良く目立つが、花も相当奇抜である。

 

花は夜に咲く。5枚の白い花びらの周縁が多数の紐状になって長く伸びる。レースのように広がり直径10㎝にもなる。夜行性の蛾に授粉してもらうために進化したと考えられている。月光によく映えると思う。

 

公園の植え込みのツツジに盛大に絡まって多数の花を付けている場所を見つけた。撮影を狙っていたが、問題は花が日没後に開き、日の出とともに急速に萎(しぼ)んでしまうこと。しかもこの暑さだ。とても夜間や早朝暗いうちに出て来る気力がわかない。

 

画像は朝8時半のもの。たまたま大きな葉の上になっていて押し花的に乾燥し、あまり縮んでいない。これはこれで面白いが、花が広がった様子を想像してみて欲しい。

アオツヅラフジ

猛烈に暑い日々が始まった。たまに集中豪雨のような1日もあるが、その後は蒸し風呂状態になってたまらない。近場を歩いてみても、今の時期野の花は少なく、イネ科の雑草が幅を利かせているばかりだ。

 

繁茂する草むらの中で薄緑色の小さな花と緑の実を見つけた。ブドウに似ているが別系統で、ツヅラフジ科のつる性の木である。日本在来種で全国に分布する。冬は葉を落とし、春からツルを伸ばしていく。雑木林の林縁などによく見られる。実(み)は秋に紺青色に変わり美しい。ただし有毒である。

 

青葛籠藤。アオ(青)は青葉と同じ緑色のこと。葛籠(つづら)とはツルで編んだ入れ物のことで、本来はツヅラフジが材料として使われた。物事がもつれることを葛藤(かっとう)というが、一説ではこの植物がもつれ絡み合う様(さま)に由来するという。

 

 

セイバンモロコシ

郊外のマンション群の道路沿い。赤っぽい花穂のススキのような植物が群生していた。草丈は人の身長ぐらい。葉はススキそっくりである。

 

イネ科モロコシ属の多年草。モロコシ(蜀黍)は穀類の一種で、トウモロコシとは別系統である。セイバンとは西播(蛮)と書き、昔の中国から見て西方の野蛮国を意味するが、原産地ははるかに遠く地中海沿岸である。日本では第二次大戦後急激に増えて帰化している。毒成分を含むので牧草には向かず、繁殖力旺盛なため厄介な雑草と化している。

 

花穂は長さ5㎜ぐらいの小穂からなり、有柄と無柄のものが混じる。小穂から出ている赤いブラシ状のものは雌シベ、オレンジ色の短冊状のものは雄シベだ。無柄のものには普通ノギ(針のような長いトゲ)が付く。拡大してもノギが見えないので、ノギのない型(ヒメモロコシ)と思われる。