植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

キンモクセイ

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 今の時期、キンモクセイの甘い香りは印象的だ。思わず木を探すのだが、なかなか見つからない。それくらい花そのものは大変小さくて地味だ。接写で思い切り拡大してもこの程度である。但しこのオレンジクリームみたいな色合いと香りは印象がぴったりだ。

 近くの農家さんなどがよく畑の垣根みたいに植えているため、町内が香りに包まれる。しかし、成長が早くて邪魔になるのか、切られたり大きく刈り込まれたりしていることが多い。近頃はトイレの芳香剤の香りにも使われて、イメージもガタ落ちである。最近のキンモクセイは受難続きだ。

ススキ

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 秋の花と言えばススキである。近所の造成地の斜面に一斉に穂を出していた。出たばかりの穂は陽を浴びるとキラキラして大変風情がある。

 写真を撮ろうとすると、民家や電線が入ってしまいアングルが決まらない。結局青空をバックに下から見上げるような形になり、間が抜けた画像になってしまった。やはり直立しているより、斜めに穂を垂れているのがススキらしい。

 今年はついこの間まで猛暑であった。急に秋らしくなってきたことを実感する景色である。

ゲンノショウコ

 

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 2年前の今頃、ヒガンバナの名所を訪れた時に見つけた花である。場所は山間部の谷水田の畔みたいなところで、草に埋もれていた。小さくてかわいい花だ。花弁の色は白で、中央の雄しべと放射状の筋がパステルカラーの紫色をしており上品でよい感じである。花の色にはバリエーションがあり、関東では白紫、関西では紅紫の花が主だそうである。

 その時は何の花かわからなくて、写真を撮って後で調べたところゲンノショウコとわかった。名前は前から知っていたが実物を見たのは初めてであった。急な腹痛に即効性があることから、効き目は「現の証拠」と名付けられたとのこと。センブリ、ドクダミと並んで日本の代表的な民間薬である。漢方薬には入っていない。

 昔の時代劇。街道を武士が歩いていると女性の旅人がしゃがみこんでいる。「お女中、如何なされた」「持病の癪(しゃく、急な腹痛)が・・」「これをお飲みなされ」と印籠から出すやつである。

 これが水田の畔に生えているということは、昔の人が薬として使うために植えたものかもしれない。いろいろ想像して楽しんだ。

ソバ畑

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 ソバ畑が満開となった。この畑は広大な斜面に続いており、一面の真っ白な花がみごとである。風向きによっては肥料のような臭いがする。この花本来の香りだそうである。不快というほどのことはないが、もともと救荒作物であったこの植物の地味なイメージそのままである。

 これは「秋ソバ」という種類で、11月ごろ収穫する。援農で何度か刈り取りから脱穀までやったが、刈束を抱えて広い斜面を動き回るのでいつも大変疲れる。但し、ソバの実が粉になり、自分で打って食べる蕎麦は格別である。(毎年蕎麦打ちの講習会に参加しているが、未だにきれいに切れない。)

 関東地方の山間部の観光地では、祖先形ともいえる素朴なそばに出会える。奥多摩の御岳山の山頂付近にある蕎麦屋では薫り高い独特の蕎麦に感激したし、箱根の強羅ではツユではなく味噌と辛み大根のおろしで食べる蕎麦を堪能した。山の中の痩せ地でも栽培できるために、各地で発達したものなのであろう。

 いろいろ思い出していると、おいしい蕎麦が食べたくなった。

 

クズ(葛)の花

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 大きな葉の下に隠れているので目立たないクズの花。甘い香りと鮮やかな紫色で咲いていることに気づく。そこらじゅうに蔓延っているにもかかわらず、なかなか絵になる花がなかった。きれいだが花全体はちょっと爬虫類ぽい印象を受ける。

 

 クズで思い出すことその1。この甘い香りの成分は、ブドウと同じだそうである。全然違う植物なのに面白い。ちなみにファンタグレープにも使われている香料だ。

 その2。思い切り葉を広げて光合成している。できたデンプンは根にためこんでいる。いわゆるくず粉である。

 くず粉で作ったトコロテンみたいものに黒蜜をかけて食べるのが「葛きり」。京都祇園の名店「鍵善」で食べたが、とにかく甘かった。案内してくれた女性は「水上勉は二杯お代わりした」と言って薦めてくれたが、私は一杯で甘さで頭が痛くなってしまった。何かの間違いだったのだろうか。

 その3。葉など大柄の植物で成長力が旺盛である。時には山全体を覆ってしまい、もとからあった樹木を枯らしてしまう。秋の七草にも入っている由緒正しい植物であるが、ちょっと遠慮願う方法はないものか。

アレチヌスビトハギ

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 相模川べりの遊歩道を歩いていたら、この花が咲いていた。色だけ見ると萩みたいだが、明らかに花の形が違う。典型的なマメ科の特徴があり、花の中央に二つの緑色の目みたいな模様がある。接写すると結構きれいである。

 この花の名を漢字で書くと「荒地盗人萩」と結構トンデモナイ。悪意が込められているみたいなので調べてみた。

 野草にヌスビトハギというものがあるのは知っている。種の莢に鉤爪があり、衣服にくっ付く。いわゆる「引っ付き虫」の一種である。どうやらそれに似た実を大量に付け、始末に困るものらしい。しかも北米原産の侵入植物で、繁殖力が強く、造成地や河原などの「荒地」に急速に分布を広げているとのこと。ネットでは「警報」「駆除」などというワードが踊る。

 日本の繊細な自然や田畑がこれに侵害されていると思うと、私も何か憎たらしくなってきた。

センニンソウ

 

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                            (相模川自然の村)

 8月末ぐらいから咲き始めたこの花。急にあちこちで目立つようになってきた。白い花の塊が結構目を引く。そして近づくと甘い香りがする。初秋の空気の香りの一部をなしているようだ。

 花の後の実に突起があり、中国の仙人の髭に見立ててセンニンソウとのこと。つる性のキンポウゲ科で、クレマチスの仲間である。

 近縁の派手なカザグルマなどは絶滅危惧種だが、こちらは結構はびこっている。やはり地味に花を咲かせて空気として生きるのが正解なようである。