里山のススキとササの原にオミナエシ(女郎花)を見つけた。その華やかな黄色に息をのむ。後ろに見える白い花はオトコエシ(男郎花)だ。こう見ると花の色だけでなく葉の形にも違いがみられるが、佇まいは似ている。大きくて少し地味で武骨な感じが、男性的だ。
探すとこれらの組み合わせがもう一か所あった。共存しているのはちょっと不自然だが、どちらの場所も住宅地の中で里山が保存されているところで、人の手が入っている。まあ固いことは言わないでおこう。
この情景を見て思ったことがある。国宝「鳥獣戯画」はカエルやウサギを擬人化した絵が実に楽しいが、背後の情景として所々に置かれた様式化された「秋草(あきくさ)」も捨てがたい。ススキと組み合わされた植物は数種類あり、その中の2種はオミナエシとリンドウであろうと思っている。とすると墨一色の絵に色を付けるなら、ススキの緑に、オミナエシの金色に近い黄色と、リンドウの青紫が加わる。岩絵の具なら、孔雀石と金箔、それに藍銅鉱(アズライト)を使うと、華やかだが落ち着いた秋らしい風情が出ると思う。