植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

中空土偶

冬晴れの某日、東京都町田市の考古資料館を訪れた。うれしいことにガラス越しだが撮影可だ。目玉は縄文時代後期(約3300年前)の中空土偶(ちゅうくうどぐう)頭部である。多摩丘陵の一角の田端東遺跡の集団墓から出土したもので、近くにはストーンサークルもある。

 

思ったより小さくLサイズのミカンぐらいの大きさだ。素朴なつくりのものが多い土偶としては内部が中空のものは珍しく、薄造りで精巧なものだ。眉から鼻にかけてのY字型の隆起、コーヒー豆型の目、分厚い唇に力がみなぎっている。そして何より特徴的なのは2本に束ねられた独特の髪型である。穴には鳥の羽根でも差したのであろうか。顔の側面にある線は入れ墨のようだ。見ていると色々な考えが浮かんでくる。

 

以前上野での縄文展で、北海道函館市出土の中空土偶と似ていることが指摘されていた。調べると確かにそっくりだ。向こうのものは高さ40㎝ぐらいの全身像で土偶としては大きいが、頭の2本の髪型の部分は欠けている。我々の祖先、縄文人の美意識と土器の成型・焼成技術の高さを示すものとして国宝に指定されている。こちらのものとはどういう関係にあるのか、興味は尽きない。