多摩丘陵の谷戸(やと、幅の広い谷地形のこと)。奥の方に小さな池があり、水が湧き出していて小川になり、下流の谷水田を潤している。水辺の草花を期待して来てみたが、いわゆる湿生植物はあまり無い。そのかわり平地では見られない昔ながらの人里の植物が多いようだ。
これも小川沿いの繁みに紛れて咲いていたもの。草丈は30㎝ぐらい。まっすぐ伸びた茎に対生した葉が90度の角度で続く。濃い緑色の葉には尖った鋸歯がみられる。葉の根元に小さな白い花がリング状に集まっている。よく見ると個々の花はわずかに紫色がかかっている。小柄ながら清々しい印象である。
全体にシソ科の様相がある。調べてみると、特徴はニホンハッカ(日本薄荷)と一致した。日本在来種のミントである。日本全国に自生。東アジア原産といわれ、西洋のものとは系統が異なる。名前の由来は中国名の「薄荷」の読みがそのまま名前になったもの。メンソール含量が多く、昔から盛んに栽培された。その後輸入品や合成ハッカに押されて廃れた。その名残かもしれない。