多摩丘陵にある日当たりのよい野原。休耕田か畑の跡のようだ。うららかな春の日で、ヤマザクラが咲き、足元には色とりどりの野草の花が一面に広がっている。華やかではないが、何故か懐かしい感じがした。
花の種類は、この地域の典型的な早春の雑草のパターンである。ナズナ(白)、ホトケノザ(赤紫)、ヒメオドリコソウ(赤紫)、オオイヌノフグリ(青)といったところだ。よく見ると地面にハコベやコオニタビラコの葉も見える。
なんとなくみんな在来種の植物のように思える。調べてみると、ナズナやホトケノザは元々日本に自生していたものだ。ただしナズナは古く麦の栽培とともに日本に伝わった史前外来種と考えられている。またヒメオドリコソウやオオイヌノフグリはヨーロッパ原産で世界中に広がり、日本へは明治時代に渡来・帰化したものだそうだ。
となると昔ながらの農村の春の風景と感じたものは明治期以降のものということになる。それでも「懐かしい過去の風景」には違いない。よく見るともうイネ科の雑草の葉が出始めている。これから初夏にかけて旺盛に伸びて野原の主役になる。