真冬の多摩丘陵は木々が葉を落とし、路傍の草もあらかた消えている。そのため雑木林の中は明るくなって見通しがきくようになった。地面は厚く枯葉に覆われ、半分枯れたようなネザサの茂み以外は、日陰に強いアオキやヤツデなどの常緑の植物が生えているのみである。ただ草木の葉がなくなった分、茂みの中に入っていくことができる。
そんな場所で珍しい植物を見つけた。カンアオイの仲間である。それも近場の優占種(といってもほとんど見かけない)であるタマノカンアオイやカントウカンアオイではない。葉が後方に大きく張り出して耳のようになった独特の形をしており、希少なランヨウアオイ(乱葉葵)だ。葉に模様がないタイプのようである。
ウマノスズクサ科の日本固有種。落葉樹林の林下などに生える。分布が富士箱根伊豆、山梨県や神奈川県などに限られる。いわゆるフォッサマグナ要素の植物である。この場所は一応東京都に含まれ、もちろん絶滅危惧種(IA類)である。
環境悪化にもめげずひっそりと生き残っているようだ。都立公園の中なので当局が妙な遊歩道などをこれ以上作らなければ安泰だろう。身近でこういうものに出会えるのはうれしい。花期は3-5月なのでもう一度見に来ようと思っている。