コケという名だがシダの仲間である。これもシダらしくない。初めて見たのは箱根の雑木林の中で、湿っていてコケがビッシリ生えているような場所。独特のみずみずしい緑色が印象的だった。拡大してみると、鱗片状の葉に光が一部透過して、真珠か金属のような光を感じる。
植物体は細長い茎と、同じ大きさの舟型の葉だけの単純な構成だ。先端が詰まっていてジャッキが伸びるように成長する。茎は所々で分岐して地を這い、先端の方が斜めに持ち上がる。延び切った茎は同じ大きさの葉が互い違いに規則正しく並んでいる。こういうタイプのハシゴがあったと思う。
葉はよく見ると茎に沿って張り付いているようなもの(背葉)と、茎に直角に付いているもの(側葉)がある。背葉は先が尖って少しめくれた感じで茎に2列にチドリで並んでいる。茎が伸びても葉の大きさは変わらない。
ヒカゲノカズラ植物門イワヒバ科の常緑シダ植物。日本全国の山間部の湿った日陰などに分布。名前は最初の発見地、京都の鞍馬山(くらまやま)に由来する。イワヒバと同じように愛好家がいて観賞用に盆栽にされたりする。先端に棒状の胞子葉を付ける。今回は探したが見つからなかった。
この姿を見ていてまた想像が飛ぶ。植物は古生代に初めて海から地上に上がった時、ごく単純な形をしていたであろう。私はクラマゴケがその原始的な姿を残しているような気がしてならない。