冬が迫る今、思い立って箱根に行った。湯本から少し登った須雲川(すぐもがわ)辺り。山の紅葉は終わりかけで、残った枯れ葉が寒々しい。深い谷間の暗い杉林の中を歩いていると、下生えに濃い緑色の丸っこい葉が目立っていた。葉は径5~10㎝で浅く三裂し、周囲の鋸歯は先がトゲのようになっている。何かに似ているなと思いつつ歩いていたが、花も実も見えないのでわからない。ツル性で地面を這っている。
たまたま葉の下が見える場所があり、小さな赤い実が付いていることが分かった。他を探すと少しずつだが結構ある。この感じはキイチゴの仲間だ。ちょっと驚いた。近場のキイチゴは春~初夏が花期で、夏に実が熟し、冬は葉を落とす。常緑で、冬に実が熟する種類があることが信じられなかった。
バラ科キイチゴ属。東アジア南部、日本では関東以西に分布し、森林の下生えに出る。花期は9~10月で、11月~1月に実ができる。キイチゴ類の中では味は良い方とのことだ。この時期、箱根に植物は期待していなかったので、意外な発見であった。