余りにも地味なのでこれまで取り上げなかった植物群がある。イラクサ科カラムシ属の仲間である。カラムシ、ヤブマオなどがあるが、皆よく似ている。林縁の半日陰のようなところに生えていること多く、少し陰気。夏場は独特のしわのある灰色がかった葉を繁茂させる。今頃には薄緑色の花びらの無い花穂を出す。
カラムシは別名マオ(苧麻)といい、非常に古くから繊維をとるために栽培された植物である。繊維は糸から布などに加工された。青苧(あおそ)とも言い、戦国武将上杉謙信の資金源になった越後上布は歴史的に有名である。ヤブマオ(藪のマオ)などの近縁種も同じように使われた。カラムシは葉の付き方が互生(たがいちがい)だが、ヤブマオは対生(同じ位置から2枚葉が出る)である点で違いがある。
画像のメヤブマオはこの仲間の中では見栄えがする種類である。葉の切れ込みが大きく先端に行くほど尖ってくる。花は雌雄異花で、見えているのは雌花の穂だ。ぎっしり花を付けるヤブマオに対してメヤブマオは比較的まばらである。全体の繊細な感じから「雌(め)」が付いたと思われる。花穂は本来直立するがこの場所では皆横に倒れていた。
多摩丘陵では、この仲間は古い民家の近くなどで群生しているのを見ることが多い。かつて利用されていた名残りかもしれない。里山の植物は永年里人の営為と関係していたので、何らかの利用価値があったものが多い印象がある。