多摩丘陵には水辺を好む植物も多い。水田の周辺などに多いヤブカンゾウ(ユリ科)はその代表だ。丘陵地は乾燥しているが、深く切れ込んだ谷(谷戸、やと)の奥に湧き水があって常に小川が流れ、その周囲が湿地になっているせいである。それを利用して谷水田(たにすいでん)が作られており、独特の景色を作っている。
行ってみたのは万松寺(ばんしょうじ)谷戸と呼ばれるところである。登っていくと谷戸はだんだん狭くなり、棚田のような谷水田や畑になっていく。
谷戸の入り口あたりの湿地を覆っているのはオオフサモ(アリノトウグサ科)だ。金魚の水槽に入っている水草がそのまま水面から突き出したようにみえるが、その通りの存在だ。南米からアクアリウム用に導入されたものが野生化した侵入種。
谷戸の途中に小さな池があり、ミズオオバコ(トチカガミ科)の花が水面に浮かんでいた。水中に沈んでいるオオバコに似た葉がわかるだろうか。
池の畔にミソハギ(ミソハギ科)が群生していた。これも湿地に自生する。仏花に用いられるので、植えられたものかもしれない。絵になる風景だと思う。
アシ(イネ科)はまだあまり伸びていない。夏から秋にかけて湿地の主役になる。
まだ残っているケキツネノボタン(キンポウゲ科)の花。この間までの主要メンバー。今は大部分星形の実に変わっている。類縁のキツネノボタンは実の先が曲がる。