相模原北公園にアジサイを見に行った話をしたが、今回一番印象に残ったのがこれだ。雑木林の日陰に生える白一色の植物だが、陰気な感じはまったくしない。逆に色がないため純粋にこの花の造形の美しさが際立つ。周囲の装飾花は非対称で、3,4枚のガク片はそれぞれ流線型といえるような形をしている。中央の両性花はわずかに緑色がかかり、やはり白い雄シベを噴き出す白い粒のような花の集合も周囲とのバランスが良い。
いわゆるヤマアジサイ(額アジサイ)の仲間であるが、全体にやや小柄で葉が細長いので、アマチャ(甘茶)という種類、それもアマギ(天城)アマチャという変種だ。アマチャはフィロズルチンという甘味成分を含み、発酵や乾燥したものは、灌仏会で仏像にかける甘茶になる。
名前の通り静岡県伊豆の天城山を中心に分布する日本固有種。そもそも天城(あまぎ)とは甘い木が生えていることかららしい。地理的には、以前話題にしたフォッサマグナ要素の植物でもある。かといって特に珍しいものではなく、園芸種として出回っている。