3月から咲き始め春の間あれだけ見かけたタチツボスミレ。どこへ行ってしまったのだろうと思っていたら、住宅街の路傍でたまたま見かけた。花はなく、葉緑素が抜けて白っぽくなった葉が印象的だ。種を飛ばした後の茶色く枯れた果穂の殻が残っていた。
よく見ると、葉の上に短い柄の付いた大きめのもみ殻のような形ものが乗っている。ほとんど同じ色でわかりにくい。これは「閉鎖花(へいさか)」である。開かずツボミのまま自家受粉して実になる。夏場は授粉してくれる虫が少ない、というか背の高い他の花に負けるので、種を残すことに万全を期すのである。多くの種類のスミレがこのシステムを採っている。また、種にも仕掛けがあるが、それは別途述べたい。
冬には地上部が枯れてしまって、地下茎で冬越しする。来年また早春から薄紫の花が見られる。最近は暖冬のせいで冬に咲いているものまであり、それも種を作る。そのせいか近場ではタチツボは年々増える一方である。