古代ローマの最盛期、五賢帝の三番目である。在位117‐138年。初めてひげを生やした皇帝でもある。それまではきれいに剃るのが通例であったが、以後の皇帝は皆ならうことになった。
ヤマザキ・マリさんのコミック「テルマエ・ロマエ」に登場し、最後に重要な役割を演じた。コインの肖像を見ると、その眼光は鋭く、厳しい表情は怖い位だ。ヤマザキさんが書かれているように、帝国の元首としての責任という凄まじく重いものを担い続けたためであろう。
トライアヌス帝時代に拡大しすぎた帝国の版図を縮小し、辺境を安定化する現実路線をとった。さらに二次に渡る帝国内巡察は、ゲルマン民族などの異民族に対する防壁を建設・強化するものであった。中でもブリタニア(イギリス)北部の長城は有名である。また法と官僚機構の整備にも努め、統治機構を確立した。
一方、芸術家肌でもあり、彼の美意識は、ローマ建築の粋とされる巨大ドームであるパンテオン神殿や、豪壮華麗なティボリの別荘などからうかがい知ることができる。