多摩丘陵の西端近く、ハイキングコースになっている七国(ななくに)峠付近(町田市)の切通し道に落ちていた礫(石ころ)である。この丘陵はほとんどが赤土(関東ローム層)か砂泥層(上総層群)からなり、人為的に運ばれたものを除いて、石ころ自体が珍しい。
礫は大きく割れており、切通しに顔を出していたものが落ちたようだ。手でもボロボロ崩れる。もとは長径20㎝ぐらいのいびつなボール型で、表面は激しく風化して赤錆色の土になっている。中心部にわずかに残った緑がかった灰色と白い斑点から見て、凝灰岩であったのであろう。そっくりなものを遠く離れた丹沢山地の頂上で見たことがある。なぜここにあるのか?
…これは御殿峠(ごてんとうげ)礫層と呼ばれる多摩丘陵の高位部に分布する地層の礫である。50万年前頃にはこの付近を流れていた古相模川の扇状地で形成されたと考えられ、強い風化を受けた10~50㎝の大型礫(腐り礫)が特徴である。これは洪水で運ばれた礫が地表で長期間風雨にさらされたことを示している。
そういえば名前の基になった御殿峠(八王子市)は1㎞と離れていない。どちらも礫層の下面の標高は180mぐらいあり、なぜ高所にあるのかを含めて、多摩丘陵の成り立ちを考える上で重要な地層である。