雑木林の薄暗い林床から奇妙な草が伸びていた。高さは1m以上あってヒョロリと立ち上がり、先端に黒い大きな花序(かじょ、小花の塊)を付けている。近づくと小さな花弁が暗い紫色をしていて、白い雄シベの葯が見える。茎の途中に大きめの総苞(そうほう、花序のツボミを包むもの)が残っている。
調べるとセリ科のノダケ(野竹)という日本自生種の植物であった。下の方にある葉は羽状複葉で大きく、確かに同じ科のクレソンに似ている。茎が一本立ちしてフシ(節)が目立つため、竹に見立てたようだ。
明るい場所では紫色の花である。茎も同じ色がかかっており、林の中では黒く見えて幽霊のよう。不気味に感じるが、正体がわかると逆に興味深い。