多摩丘陵の昼なお暗い雑木林の中には、幅2メートルぐらいの舗装されていない道がくねくねと続いていることがある。これは「鎌倉古道」と呼ばれる古い道で、その由緒は鎌倉時代以前まで遡るという。神秘的な雰囲気があり好きである。
かなりの部分が切通しのようになっていて、その壁面は土がむき出しになっている。上の方は庇(ひさし)のようになっていて年中雨が当たらない。そのため乾燥した土が溜まり、草も生えない。斜めに突き出しているのは枯れた木の根だ。
乾いた土に点々とすり鉢状のへこみがある。これはウスバカゲロウというトンボに似た昆虫の幼虫が作ったもの、いわゆるアリジゴクだ。穴の中に一匹ずつ大あごを持った怪異な生き物がいる。ただし大きくても2㎝もない。アリなどが落ちてくると地中に引きずり込んで吸汁する。何年も気長に待っており、時期が来ると白いカゲロウに羽化する。頼りなげに翔ぶ儚いものの代表だ。その形と習性は色々なフィクションにインスピレーションを与えている。