白いスミレである。場所は日当たりのよい農道の縁のアスファルトとコンクリートの隙間だ。5,6株並んで咲いていた。
地上茎を伸ばさず葉が細長い。大きさや特徴はスミレ(種名)とよく似ているが、白い花と太短い距(きょ、後ろに突き出す花の一部)で識別できる。花茎はあまり高く伸びない。開花時期はスミレと同等かやや遅れる。
花は近づいて見ると紫色の脈(スジ)があるが、全体はほぼ白色に見える。5枚の花弁の内、側弁(両側に出る花弁)と唇弁(下向きの一枚)は脈の色が濃く、少し紫色がかすれて滲んだようになっている。この色の濃淡は個体変異が大きく、全体に紫がかるものもあるそうである。
「有明」とは夜明けの意味。旧暦16日以降の月が残っている(有る)夜明けのこと。アリアケの名前は、花色の変異を刻々変わっていく夜明けの空(有明の空)に見立てたものだ。「春はあけぼの ようよう白うなりゆく…」の色だ。なんとも雅(みやび)な感覚である。