植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

皇帝ネルヴァ

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 御覧の通り痩せぎすの老人である。即位時61歳。当時としては老齢であり、病弱でもあった。威厳はあるが軍人という感じはしない。ローマ皇帝は全軍団の最高司令官(インペラトール)でもあり、軍務のキャリアも積んでいるものだが…。なぜこの人物が「五賢帝」の最初の皇帝となったのか?

 ドミティアヌス帝の暗殺後、恐怖政治が終わったことで民衆は熱狂したが、亡き皇帝を支持していた軍部は不穏な動きをしており、世情は騒然としていた。この状況を収拾するために、元老院(貴族階級)の中から擁立されたのがネルヴァである。

 彼の治世は短い(在位AD96-98年の14月)が、懸命な努力により徐々に社会の秩序は取り戻されてきた。しかし軍部の掌握には失敗した。そこで彼は軍部と民衆の両方に気に入られる者として、ゲルマニア軍団長トライアヌストラヤヌス)を養子とし、自分の後継者にした。その結果、新皇帝のもとでローマ帝国は空前の繁栄を迎えることになる。

 実子がいなかったこともあるが、血縁ではなく最も皇帝にふさわしい人物を後継者に指名したということで、ネルヴァも「五賢帝」の一人に列せられることとなったのだ。