以前、古代ローマ帝国のプリニウスが著した「博物誌」を取り上げ、当時のコインに描かれたローマ皇帝(ヴェスパシアヌス、ティトゥス)とのエピソードを紹介した。このことに限らず、ローマ帝国の話は大好きだ。今後コインから見たローマ皇帝の年代記を自分なりに紹介してみたい。
ドミティアヌス(在位AD81-96)は、父と兄の跡を継いで皇帝となった。彼の治世はまずまず平和で、有能な為政者だった。しかし治世の後半には独裁的となり、ついには猜疑心にとらわれて恐怖政治をおこなった。元老院(貴族階級)とも対立し、最後は暗殺されてしまう。そのため、後世暴君であったという評価を受けることとなった。彼の後にはいわゆる「五賢帝」の名君が続くのでことさらに悪く言われたのだろう。
画像はデナリウス銀貨に描かれたAD88年頃の彼の肖像である。父親や兄とよく似ている。青年の頃は美男だったらしいが、若くして髪が薄くなり…。(という記録が残っている)そのためコインの肖像はちょっとアヤシイ。父親のヴェスパシアヌス帝はみごとな丸頭だがそのままコインに描かれており、気にしていた形跡がない。息子は器(うつわ)が小さかったのかもしれない。