神奈川県西部を流れる酒匂(さかわ)川は、丹沢山地や富士箱根方面からの石を集めている。その河原や、相模湾への河口付近の海岸などでよく見かける謎の石がある。画像のように白っぽい部分と黒灰緑色の部分がマダラに入り乱れたような不思議な模様だ。堆積岩のような縞模様や、火成岩や変成岩的な結晶は見られない。
割ってみると、白っぽい角礫の間を黒灰緑色の砂岩様の基質が固めているように見える。角礫は薄いクリーム色で陶器のような感じである。すべて同じ材質であり、ひびが入って複雑に割れたような形をしている。
調べても分からず、長く文献や博物館のHPなどに当たって考えてきたが、今のところハイアロクラスタイトというものではないかと考えている。
ハイアロクラスタイトとは、海底火山の溶岩が海中に流出した結果粉々に砕けて、それが火山灰などと堆積した水中火山砕屑岩(さいせつがん)の一種である。
ギリシャ語の「砕けたガラス」が由来だそうである。溶けたガラスを急冷すると表面が緻密に固まり強度が増す。強化ガラスの原理だが、割れるときは粉々になるのをご存知の方も多いと思う。
玄武岩質溶岩は粘り気が少なく、同じ条件では丸いパンのように固まって枕状溶岩(まくらじょうようがん)になる場合が多い。しかし、粘り気が多い流紋岩質の場合は、噴出すると直ちに固まって砕けるようである。角礫が白っぽいのは珪酸分が多い流紋岩質のためであろう。
かつて丹沢は海底火山であった。海中に赤熱した溶岩が噴出して一瞬で固まり、次の瞬間、爆裂して火山灰などと吹き上がる光景はさぞかし壮観だったろうと思う。