前回、「氷の花」について少し触れたが、それで思い出したことがある。そういえば「石のバラ(薔薇)」もあったな、と。
画像は輝沸石(きふっせき)という鉱物の結晶群(伊豆河津町菖蒲沢産)である。全体が無色透明なのでややわかりにくいが、細長く伸びた六角板状結晶がバラの花のように集合している(直径0.5cmぐらい)。輝沸石は特に珍しい鉱物ではないが、このような形になるのはやや希である。小笠原の方では直径3㎝以上の花状の結晶群が見られるそうである。
菖蒲沢は有名な産地で、火山性の黒い集塊岩の空隙中に結晶が見られる。「輝」と付くだけあってキラキラ感が強く、見る方向によっては真珠のような光り方をする。
沸石の仲間には、針状結晶が球のようになっているタイプが結構ある。また他の鉱物の中にも放射状や、球状に集合して菊花石のように花に見える場合がある。しかし私の知る限りでは、実際のバラの花に見える結晶群を形成するのは輝沸石のみである。
ひょっとすると、輝沸石は結晶がかさばるために球状にならず、紙をロール状に巻いたように配列したため、花のような集合体ができたのかもしれない。このように、植物の花と鉱物の結晶(群)の思いがけない類似は、何らかの共通する法則性があるのではないかと考えさせてくれる。