植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

駅の怪

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 (白花のキキョウです。ちょっと怪しいものを感じる。)

 

 小田急小田原線沿線の街は、現在は明るくオシャレな場所であるが、一昔前は人気(ひとけ)が無くて寂しいところも多かった。駅も長年の人いきれで薄汚れていた。交錯したであろう悲喜こもごもの様々な人生が染みついたように。

 その駅は長い歴史を持つ街のもので、その分駅舎も古い。改札口から薄暗い階段を上ると蛍光灯に照らされた明るいホームになる。ホームはどこか昭和の雰囲気が残っていた。

 少し前になるが、私はその街で働いていた。夕刻、その帰り道、いつものように駅のホームに上がっていった。一日の疲れを感じて足取りが重かった。ホームでは人の気配がしていた。

 上がりきってから周りを見るとなにか変だ。ホームに人がいないのだ。移動したわけでも、電車が来て乗っていったわけでもなさそうなのに。そして何気なく、先ほど人の気配がしていたあたりに視線を向けた。

 その時見えたのだ。黒い皮靴を履いた足先だけが…。 他にもう一つ、ハイヒールを履いたのもあったような気がする。一瞬凍り付いて数秒固く目をつぶり、そっと目を開けると、そこには何もなかった。

 その時新たに階段を上がってくる人があり、そのうち電車も来て、いつものホームの光景に戻った。

 私は何を見たのだろう。何かの事件がそこであり、その時の関係者の強い思いがそこに残ったのか…。今思っても謎である。