植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

フジカンゾウ

少し秋めいてきて赤紫色のハギ(萩)の花を街でも見かけるようになった。近場の丘陵地を歩いていて林縁でハギに似た花を見つけた。淡いピンク色で花の大きさ(8~10mm)や形は似ているが、花の付き方が異なる。草丈は1.2mぐらい。奇数羽状複葉で小葉の数は5~7枚である。

 

マメ科多年草。本州~九州に分布する。ヌスビトハギの仲間であるがやや大型。実は鎌のような形のものが2つ連なり長さ3㎝ぐらい。花に比して大きい感じ。実の側面に剛毛がありこれが衣服にくっ付く。

 

名前は花がフジ(藤)に似ており姿かたちがカンゾウ(甘草)を思わせることから。甘草とは漢方薬になる同じマメ科の植物である。他の植物に紛れて楚々として咲いている。近頃急激に増えているアメリカ原産のアレチヌスビトハギのように日なたを占領するようなことはしない。

今年のツルボ(花)

多摩丘陵にある神社の境内。秋祭りに向けて8月下旬に草刈りが行われスッキリしたなと思っていた。その後気が付くとツルボが一斉に花穂を出して秋風に揺れていた。これまで2,3回書いたが、今年は特に見事で広い面積が薄赤紫色の花でいっぱいである。

 

キジカクシ科の球根植物。もう半月近く咲き続けている。気を付けて歩くと都市近郊でも見られる場所が結構ある。しかしサクラなどの木の下で半日陰だし、園芸種の花と違って控えめな色合いなので近くを通らないと咲いていることも分からない。

 

いつも思うのだが、画像にすると印象が違ってしまう。実物はもっと広がりがあり感動的ですらある。頭の中で花の美しい部分が増幅され、バックの建物などが消去されてしまうためかもしれない。

相模川の玄武岩 その2

河原の石に同じ玄武岩でも特徴が異なるものも混じっていた。富士山の溶岩より赤っぽい色で、生地はレンガのような印象である。気泡は少ない。ところどころにある白い物質はカッターナイフで傷がつかないほど硬い。

 

考えられるのは枕状(まくらじょう)溶岩である。玄武岩質の溶岩が海底で噴出した際、海水で急激に冷やされて丸い枕のような形になったものだ。急冷のため表面が緻密な構造になっている。この石は丸みを帯びた物体の一部のような形状をしており、枕状溶岩の表面部分の可能性がある。

 

丹沢山地の奥地にはあちこちに露頭(ろとう、露出しているところ)がある。これははるか昔(1500~1000万年前)、丹沢が南方の海の中にあって海底火山だったころ海底に噴出した溶岩の名残である。フィリピン海プレートに乗って北上し。本州プレートにぶつかって沈み込めず盛り上がったのだ。年間数㎝でも1500万年もたつと何百キロも移動することになる。

 

白い物質は玉髄(ぎょくずい)とよばれる微細なケイ酸の結晶の集合体のようだ。メノウの仲間である。枕状溶岩の生成後にケイ酸分に富む熱水が浸透してきて空隙を埋めたものと考えられる。

相模川の玄武岩(げんぶがん)その1

相模川は神奈川県の中部を流れる大河で、この手の石は下流の海老名市付近の河原でも多い。外見は穴がだらけだが硬く、手に持つとずしりと重い。黒褐色の生地に灰色の点々の結晶(斜長石)が散らばっている。玄武岩とは火山岩の一種で、有色鉱物が多いので黒っぽくなる。要するに溶岩が固まった岩石である。地上で生成したものは、火山ガスが気泡となって抜け、跡が多数の穴になっている。

 

相模川の上流域は丹沢(たんざわ)山系や関東山地である。現在火山はない。モノの本によると相模川玄武岩は富士山由来と書かれている。なぜ分かるか?日本の火山では玄武岩質の溶岩を噴出するものは数少なく、近辺では富士山くらいなのである。ちなみに箱根火山は玄武岩質ではない。

 

そういえば大きな支流である道志川(どうしがわ)は富士山麓の山中湖に源を発している。直線距離で70キロぐらいあるのに、比較的大きな石だしあまり摩耗した感じでもない。山中湖は富士の溶岩による堰止湖(せきとめこ)と聞いたことがあるので、洪水で決壊した時の大土石流で一気に押し流されてきたものかもしれない。破局的な光景を想像した。

 

クルマバナ

草丈は40~60㎝。茎は断面が四角形で葉はミントそっくりだ。花は紅紫で長さ1㎝ぐらい。秋が兆(きざ)すと次々に咲いていくシソ科植物の先駆けである。紫水晶アメシスト)のような花色が美しい。

 

花は輪生してつぼみや花ガラがガクや苞とともに円盤状になり、間隔を置いて数段積み重なっている。その形が車輪を思わせるので車花、というのが名前の由来である。円盤は全体に赤紫色を帯びている。

 

これもシソ科トウバナ属。北海道から九州まで山野の道端などに分布する。イヌトウバナとほぼ同じ場所に生えていたが花穂の形で明瞭に見分けられた。

ミズタマソウの花

この植物は丸い実が白い毛におおわれていて独特の陰影を作り、水滴(水玉)のように見えることから水玉草の名がある。また霧や雨の後はどっさり本物の水滴を付ける。ツキミソウと同じアカバナ科。国内の山地に自生する。近場では多摩丘陵でも見られる。

 

近寄って見てみると花の形もじつに面白い。径4~5㎜しかないが、毛の生えた子房の先に着いた花びらは2枚である。切れ込みによって4枚に見える。見方によって白い蝶のようだ。花びらが2枚の植物はキツネノマゴ科だけではなく意外と多いのかもしれない。

 

そして花びらより大きいガクが2枚、雄シベも2本。雌シベは1本だが先端が2つに割れている。「2」ばかりで構成されているにしては、部品の配置によって立体的に見えるのが興味深い。

イヌトウバナ

シソ科の多年草。北海道~九州の山地の林縁などに分布。見つけたのは都市近郊の低山で麓のバス停から10分ぐらい登ったところ。そんな近いところでも平地とは少し違う植物に出会う。

 

類縁のトウバナは、平地の田畑の周囲などに雑草的に生えている。背丈は低くて10~20㎝ぐらい。花は輪生して次々と輪が積み重なってゆき花序が長く伸びるのでトウ(塔)花という。イヌトウバナは花の輪の間が離れており草丈も20~30㎝になる。イヌ(犬)というのはよく似た亜種といった意味であろう。

 

花は白色で長さ6、7㎜、幅4、5㎜と小さいが、かすかに薄赤紫の模様がある。茎の断面は四角形で葉は同じ科のミント系植物そっくりである。全体に清楚な印象を受ける。