植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ジャコウアゲハの幼虫

昨年の今頃ウマノスズクサを撮った場所に行ってみた。花は咲いていたが、どこか妙な感じである。見ると黒い芋虫が付いていて葉をモリモリ食べている。ジャコウアゲハの幼虫とすぐわかった。実際に見るのは初めてだ。

 

アゲハの仲間である。幼虫は4-5㎝ぐらい。黒地に白い筋が入り多数の突起に覆われている。前の方の突起には先端に朱色の粒が付く。何とも言えない不思議な造形である。普通のアゲハも幼虫は白と黒で、鳥の糞に擬態していると言われるが、終齢幼虫は目のような模様のある緑色に変わる。ジャコウアゲハは終齢でも白黒だ。

 

ウマノスズクサ(下の画像は花)を食草とするので有名。この植物には毒成分が含まれており、幼虫から成虫まで体内に蓄積する。そのため天敵の鳥が食べても吐き出すそうである。またこれに懲りた鳥はもう食べない。奇怪な姿は鳥に対して目立つためもあるのだろう。うまくできている。

最後に以前撮影したジャコウアゲハの成虫を示す。多摩丘陵では結構見かける。いつ見てもエレガント(優美)な姿であるが、色合いに幼虫の面影が残っている。

ダイコンソウ

草むらの中に点々と鮮やかな黄色の花が目立つ。花が少ない今頃は貴重である。最初は全体の印象からキンポウゲの仲間かと思われたが、花びらの感じや実の形が異なるようだ。

 

じつはバラ科で、全国の丘陵地や山地の林縁や草地に分布する。草丈は50㎝程。五弁の花は径1.5~2㎝で雄シベが多い。花後は花びらが落ちてモールのボタンのような印象になる。分岐した花茎に、先が尖った鋸歯(きょし、ギザギザ)がある葉が付く。

 

大根草。トボけた名前である。地面に放射状に広がった葉(根生葉)が野菜のダイコンを思わせるのが名前の由来とのこと。下に他の場所で撮ったものを示す。

ヤマユリの花2022

昨日の土砂降りの雨の後、今日は昼前から晴れて久しぶりの夏空だ。街も木々も雨に洗われて爽やかに見える。梅雨末期から盛夏の始まりの今ごろ、近場の花といえばヤマユリだ。

 

日本固有種のユリである。驚くほど大きな花で香りも強い。多摩丘陵では丈が高くて花が1~3個のものが多いが、この場所では多数の花を付ける傾向がある。画像のものは花茎が倒れた先に花がついており、多数のつぼみが見える。絡みついているのはオニドコロのようだ。

 

場所は住宅に囲まれた雑木林で、コナラを主とした高木の下はササ原になっている。足元には点々とアキノタムラソウの薄紫の花が咲いていた。街中にしては不思議なほど里山の植物が残っている。

 

それは周辺の皆さんが下草狩りなど手入れをされているからである。今各地でナラ枯れが猛威をふるっているが、ここでは媒介する害虫のトラップなど対策もなされている。そのためか枯れたコナラの木はほとんどないようだ。

いつの間にかエノコログサ

7月半ばにしてまた梅雨が戻ってきたようだ。ふと道路沿いの空き地を見るとエノコログサの花穂であふれかえっている。つい最近までは見えなかったと思う。最近の高温と雨で一気に伸びてきたようだ。

 

ここは春先からカラスノエンドウが群落になっており、それが黒くなって枯れた後はツユクサなどが咲いていた場所である。一方、画像奥にはススキがもう伸び始めており、次々と植物が遷(うつ)り変わっていくのに季節を感じる。

 

イネ科の1年草。花茎は少し斜めに出て長さは1m近くある。穂は長さ8~10㎝あり垂れる。どこでも見かける雑草だが、今年は特に多いように思う。

アキノタムラソウ2022

この花を取り上げるのは3度目だ。透明感のある薄紫色が涼しげで好きな花である。オオバギボウシなどとともに、谷戸(やと)の林縁に夏草に埋もれて咲いていた。丘陵地の半日陰のような場所に多い植物である。

 

シソ科。春のホトケノザなどと異なり、長い花穂を伸ばす。このタイプが多い秋のシソ科の花の先駆けをなすものである。

 

「アキノ」と付いているが、7月から11月まで長期間見かける。「タムラ」は、寄り集まる意味の「たむろ」から変化したとのこと。一度群落になったものを見てみたい。

エゾノギシギシの実

拡大写真をいきなり見せられると、ちょっと不気味な宇宙生物のようだ。こういうのが蠢(うごめ)いて、たかってきたら嫌だなと思う。じつはごく一般的な雑草の実である。

 

これも緑一色だ。タデ科。ヨーロッパ原産で広く日本に帰化している。名前の「エゾノ(蝦夷の)」は北海道で最初に見つかったためだ。鈴生りになった実をしごくと、いかにもギシギシいいそうだ。水田の周囲など湿ったところに多い。

 

果実(白色の楕円形)を包む花被片(かひへん)は径4㎜ぐらいのペナント形で、周囲が深く裂けたようなとげになっている。類縁のギシギシ(在来種)はよく似ているが、実の一部に鋸歯(ギザギザ)がある程度である。

アオガヤツリ

早い梅雨明け後猛烈に暑い日が続いた。そんな時、植物で一番元気なのはカヤツリグサ科とイネ科である。道路沿いに大いに繁茂している。よく似たものが多く見分けるのに苦労するが、画像のものはアオガヤツリ(青蚊帳吊)と思われる。地味ではあるが、近づいてみると花の造形が目を引く。

 

花穂は小穂(しょうすい)という複数の花を含む鱗片が重なったものが単位になる。長さ5㎜ぐらいの平べったい紡錘(ぼうすい)形をしている。拡大すると鉱物の結晶のような不思議な質感である。私が知っているものでは斧石(おのいし)という鉱物に似ている。 

 

1020㎝の花茎の先に35枚の長い葉が付き、その上に小穂が径2㎝ぐらいの球状に集まる。そこから67本の花茎を出してさらに球状の塊を付ける。分散する線香花火の火花のようだ。

 

他のカヤツリグサの仲間は小穂が茶色っぽい。画像のものは緑一色であり、これが名前に「アオ」と付いている理由だ。「青」葉というように緑色の意味である。