植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

チダケサシの花

多摩丘陵谷戸(やと)の渓流沿い。緑滴る雑木林の縁で薄紅色の花が目立っている。アリや甲虫が集まっているのは蜜が多いからか。

 

ユキノシタ科。葉は2-3回奇数羽状複葉という複雑な形だ。草丈50-60㎝。花弁は5枚。細かい花が棒状に並び全体に円錐形の花序を作る。

 

チダケサシとは何か不穏なものを感じる名前だ。しかし「乳茸刺」と書き、花茎にチチタケ(乳茸)という食用キノコを刺して持ち帰ったことが名前の由来という。近くにそれっぽいキノコが生えていたが、チチタケかどうかは確認していない。

 

類縁のアカショウマは以前紹介した。非常によく似ており、個体変異も大きいので判断にこまる。花序の形や小葉の先が尖っていない点などから判断して、今回のものはチダケサシとした。

オオバギボウシの花

先週多摩丘陵オオバギボウシ(キジカクシ科)を紹介した。あの時はまだ花茎が伸び切っていなかった。その後関東地方は梅雨明けして猛烈に暑い日が続いた。1週間経った今日見に行くと、花茎が長く伸びて花が咲き始めていた。

 

ギボウシの名の元になった擬宝珠(ぎぼうしゅ、昔の橋の飾り)に似た形のつぼみもくっきりした形で並んでいる。形は今風に言うならボーリングのピンかジャグリングのクラブといったところだ。短期間にこんなに変化したことには驚いた。

 

梅雨空で見るのも良いが、暑い夏の日に雑木林の木陰で咲いているところも爽やかで涼しげである。わずかに紫に色づいているのが奥ゆかしくて美しい。

 

ビロードモウズイカ

広い歩道のコンクリートアスファルトの間にズボンッという感じで立っている。薄緑色の微細な毛におおわれており、見た途端この名前が浮かんだ。図鑑等で知ってはいたが実際に見たのは初めてだ。描いていたイメージ通りの存在感だ。

 

ゴマノハグサ科の2年草。種はその年に芽を出し、地面に張り付いた葉の形(ロゼット)で冬越しする。翌年長い棒のような花穂を伸ばして、五弁の黄色い花を付ける。夏中咲き続ける。強烈な陽光と高温のせいか花はしおれたようになっている。整った形の花を見かけたらまた紹介したいと思う。

 

ヨーロッパ原産。漢字で書くと天鵞絨毛蕊花。全草がビロード状の細かい毛におおわれ、雄シベ(蕊)にも毛があるのが名前の由来である。明治時代に観賞用に導入された。当時の園芸家は大層な名前を付ける傾向があったようだ(ヒメヒオウギズイセン、姫檜扇水仙、など)。その後各地で野生化した。日当たりのよい荒地のような場所を好むようである。

オオバギボウシ

野山に自生するギボウシを求めて多摩丘陵を歩いてみた。谷間(谷戸やと)の小道を登っていくと路側の林縁にそれらしき葉がある。ただしギボウシよりかなり大型で30㎝以上ある。葉は長めの柄(え)があり、表面の葉脈が印象的である。そこから花穂のようなものが傾いて突き出している。

 

花のようなものは白い鱗片が重なっており先端が少し薄紫色に染まっている。調べてみるとオオバギボウシという種類のようだ。まだ花穂は伸び切っておらず、鱗片のように見えるのは苞(ほう、葉がガクに変わったもの)である。これから擬宝珠に似たつぼみが伸びてきて、紫色の花房を形成する。

 

春先の新芽はウルイと呼ばれる山菜の一種である。道沿いにこの草が並んでいるので、かつて食用とするために里山の一角に植えられたものかもしれない。

ギボウシの花

マンションの中庭に植えられていたもの。キジカクシ科でジャノヒゲなどの仲間。かつてはユリ科に分類されていた。日本固有種。林縁、林内に自生する。日陰でも元気に育つので古くから栽培されている。

 

筒形の花はラッパ状に広がり六裂する。長さ4~5㎝。蒸し暑い今の時期、薄紫の花色が涼しげだ。葉は幅の広いヘラ形で根元から出る。長さ15㎝ぐらいあり葉脈が目立つ。花色のバリエーションや斑入り(ふいり)の葉など園芸種が多数ある。

 

ギボウシの名の語源である擬宝珠(ぎぼうしゅ)は、つぼみの形が昔の木造の橋の欄干につけられた擬宝珠という飾りに似ているところからきている。

ムラサキシキブ

紫式部。雅(みやび)な名前だが、秋に紫の実をたくさんつけるので、ムラサキシキミ(紫重実)と呼ばれていたものが変化したとのこと。6月上旬からの花も薄赤紫の花びらと黄色い雄シベが美しく、甘酸っぱいような独特の香りも印象的である。

 

シソ科で、樹高2~3mの落葉低木。日本全国の低山の森林に自生する。小ぶりのサクラに似た葉は毛がなくツヤもない。木全体に柔らかく優しい感じである。そのため他の木々の間に紛れるとどこにあるのかわからない。

 

街中でよく見かける類縁の園芸種コムラサキと比べると花も実も控えめ。しかし今の時期は香りで所在が分かる。丁寧に見ていくと多摩丘陵の雑木林では意外に多いことが分かる。

夏羽のコサギ

いつもの街中の川。カルガモがのんびり泳いでいる。今日はコサギが水の中を歩いているのを見た。純白の羽色は目立ちいつ見ても優雅だ。時々姿を現すが、すぐいなくなってしまう。

 

不鮮明な画像で申し訳ないが、後頭部の長い冠羽は2本ある。また尾羽の上部にも飾り羽が生えていて先端が上にカールしている。オスメスは関係なく夏の繁殖期に当たって変化する。なんとなくレースのウエディングドレスを思い浮かべる。冬場は冠羽と飾り羽がなく、全体にアッサリした印象である。

 

サギ科。渡りをしない留鳥で、本州以南の河川や湖沼などで繁殖する。東~東南アジアに分布する。食べ物は魚、カエル、昆虫と動物食だ。しかし以前紹介したが、この川は雑食性のカルガモが住み着いているうえに、時々やってくるカワウ(河鵜)が魚を根こそぎさらって行ってしまうので、食べ物探しは一苦労だろう。