植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

コガモそろそろ旅立ち

いつもの川のコガモたち。2か月ほど前からカップルができ初め、今は全員つがいで行動している。大変仲がよさそうである。実をいうと心配していた。コンクリートの護岸で固められた川のどこで巣を作るのか、増水もあるし大丈夫か…

 

調べてみると、一部は北海道の湖沼などに留まるが、大部分は中国からユーラシア大陸北部、アラスカなどに戻って営巣し繁殖する。日本へは冬鳥として渡ってきていたのだ。あちらの短い夏の間に子育てをしなければならないので、日本にいる間に相手を決めておかないと間に合わない。

 

この小さな鳥が海を渡り、広大なシベリアの大河の岸辺や湖沼で暮らしている光景はスケールが大きすぎて想像もつかない。自分がつくづくせせこましい島国根性でいらぬ心配をしていたと恥じた次第である。

 

真冬の川辺に並んで眠っているところから始まった観察だが、愛嬌のあるキャラクターにはずいぶん楽しませてもらった。無事にヒナを育てて、また戻ってくることを祈っている。

 

下の動画はコガモたちが大集合して合コン?している様子だ(3月16日)。オスが盛んにアピールしているところが微笑ましい。

 

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ギンラン(銀蘭)

家から徒歩20分ぐらいのところにキンラン(金蘭)ギンランがみられる雑木林がある。鬱蒼とした林とともに畑や眺望が開けた草原(くさはら)などもあって多様な植物がみられる。私の植物観察のポイントの一つだ。

 

ギンランの花は純白でほとんど開かないままだが楚々として美しい。キンランとは白花と黄花の違いはあるが姿かたちはよく似ている。ただ、ずっと小柄で、近場のものの草丈は10㎝もない。花も4~6個ぐらいだ。それが高木の下生えの潅木の更に下に生えているので、よほど目を凝らさないと見つけることはできない。

 

キンギンの二種類はいつも一緒に生えているような気がする。花期がほぼ同じで、どちらも生育環境が雑木林の下の昼なお暗い、普通の草が生えないような限られた場所であるためと思われる。木の根や菌類が関与する複雑な共生関係を築いて栄養を得ているので、葉緑素を持ちながら光合成のみに依存しないのである。そのため他の場所に移したり、環境が変わったりすると共生関係が崩れてもう生えなくなってしまう。

 

だいぶ前この場所で初めてキンランを見つけた時、1本だけギンランを見た。その後毎年探していたが見つけることができず、この場所では絶滅してしまったと思っていた。今回見つけられて感激である。大事にしなくては。

ホオノキ(朴木)

自宅の近くに丘陵地があり、広い雑木林が残っている。周囲は住宅地が迫っているが不思議に里山の自然が残っており、公園では見られない様々な種類の樹木が混在している。その中の一本に大きな花が点々と付いているのに目が止まった。こんもりした大木である。

 

花の直径は15-20㎝で上向きについている。中心にこん棒状の雌シベがあり、その周りの多数の雄シベは赤紫色である。花びらは咲き始め白く、そのうち黄色っぽくなる。清涼感のある甘い香りがする。葉も大きく長さ20-40㎝の先の広がったヘラ形(倒卵型という)で、枝先にまとまって付いている。

 

モクレン科の落葉高木で高さは25mにもなる。日本全国に分布する。「ホオ」は「包」を意味し、かつては大きな葉で食べ物を包んだためという。端午の節句の柏餅もそうだが、木の葉にはよい香りの成分とともに抗菌成分も含まれており、食器として利用することは理にかなっている、

チガヤの群生

相模川の堤防上の空き地に銀白色の穂が一面に広がっていた。高さは50㎝くらい。柄が茶色のため目立たず穂だけが宙に浮いているように見える。何か白いものが一斉に草原から噴き出しているようで不思議な感じだ。春風に揺れていると独特の風情がある。

 

イネ科の多年草。日本全国に分布。冬、地上部は枯れるが、地下茎から芽を出し今頃花穂を出す。畑地や草刈りがされた空き地などに多い。これも日当たりを好む植物で、背が高いススキなどが生えてきて日当たりが悪くなると消えてしまう。

 

古くから知られており、古事記万葉集にも登場する。名前の「チ」は漢字の千で、群生するさまを表している。「カヤ」は茅と書き、先の尖った葉を武器の矛(ほこ)に見立てたものだ。端午の節句ちまき(粽)は、一説にはかつてはチガヤで包んだので「茅巻き」がその名の由来であるという。

カワウの食事

いつもの街中の川。珍しく鵜(ウ)が来ていた。くるくる泳ぎ回っている。せわしなく潜っては浮かび上がる。よく見ると頭をあげた時は口に小魚を咥えており、飲み込むとまた潜ることを繰り返している。恐ろしく手際が良い。さすが鵜飼いに使われるほどの魚取り名人だ。

 

日本に生息するウの仲間は4種類あり、代表的なのはカワウ(河鵜、川鵜)とウミウ(海鵜)である。名前の通り生息域が異なる。この川は海からは距離があり、背中の羽根が茶色なのでカワウで間違いないと思う。ウミウの羽根は緑がかった黒である。嘴(くちばし)あたりの模様も少し異なる。

 

以前この川では魚影を見たことがないと書いた。水深は浅いし透明度は悪くないので、小魚でもいればわかると思う。そのためか住み着いているのは植物食(雑食)のカルガモコガモばかりだ。以前魚食性のアオサギコサギが来ていたが、手持ち無沙汰な感じですぐにいなくなってしまった。

 

今回は小魚を見せられて驚いてしまった。やはり魚はいることはいるのだ。おそらくカワウが時々やってきて根こそぎ採って行ってしまうのだろう。

オッタチカタバミ

相模川の土手の上を歩いていると、小さな空き地を黄色い花が一面に覆っていた。鮮やかな黄色の花と黄緑色の葉が爽やかで春らしい感じがする。花と葉はカタバミそっくりだ。しかし茎が地を這うカタバミに対して、茎が立ち上がり根元で分岐して長い花茎がいくつも出ている。草丈は15㎝ほど。

 

カタバミ科。花の直径は1.5㎝くらい。他の特徴としては全体に白い毛が多く、葉の表面がビロード状に見えることと、托葉が小さくて目立たないことなどがあげられる。

 

アメリカ原産の帰化種。第2次大戦後に駐留米軍の荷物について侵入したとされる。そういえばこの付近の相模原台地は米軍関係の施設が多い。とはいえ関東以南の日本中に広がっており、近場では街中でも至る所で見かける。

 

名前は漢字にすると「おっ立ち酢漿草」。雑草とはいえちょっとぞんざいな感じがする。

 

キツネアザミ

日当たりのよい野原を好む植物である。このような植物がのびのび育っている所は都市部ではまずない。穴場としては大きな川の河川敷がある。増水の可能性があるので利用されない広い草地があるのが普通だ。晴れた春の日に緑の草原(くさはら)を歩くと心が浮き立つ感じがする。今は様々な野草の花盛りだ。

 

70-80㎝ぐらいの草丈で、花茎が枝分かれして多数の花を付けている。赤紫の花とそれを包む鱗片状の総苞(そうほう)、切れ込みの深い葉からアザミの仲間に見える。だがアザミの特徴であるトゲがない。キツネにダマされたようだ、というのが名前の由来ととのこと。

 

キク科で、本州以南に分布する。郊外の畑の周辺などでよく見られるが、農耕文化などと一緒に大陸から伝わった史前帰化植物といわれる。