植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

コボタンヅル(小牡丹蔓)

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前回のアキカラマツに絡まっていたつる植物。花は付けていたが、以前紹介した同じキンポウゲ科のボタンヅルだと思ってスルーしていた。しかしどうも全体の感じが異なる。そこで調べてみるとコボタンヅルという変種であった。

 

日本から中国まで山地の林縁などに分布。園芸種クレマチスの親戚にあたる。変種といっても特に珍しいものではなく、名前のように小さいわけでもない(花の径2㎝弱)。花もちょっと見ただけでは見分けがつかない。ただボタンヅルよりスッキリして優しい印象を受けた。

 

一番の違いは葉である。複数の小葉(しょうよう)からなる葉を複葉(ふくよう)というが、コボタンヅルは3枚の小葉がさらに3組ずつに分かれた合計9枚からなる2回3出葉というタイプである。一方ボタンヅルは3枚の小葉からなる(1回3出葉)。画像に見える葉で確かめていただきたい。それぞれの小葉の形が微妙に異なるのが面白い。

 

なお、下の方の花に写り込んでいる虫はミドリバエというハエの仲間である。背中と腹がメタリックな緑色で虹色を帯びており、花のミツを食べている。普通のハエのイメージではない。自然のものを観察していると意外な出会いがあるのが楽しい。

アキカラマツの花

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多摩丘陵の日当たりのよい林縁。繁茂する夏草に混じって見慣れぬ花を見つけた。調べるとアキカラマツ(秋唐松、秋落葉松)というキンポウゲ科の植物であった。

 

花に花弁がなく、多数の雄シベがカラマツの葉のようなカラマツソウという植物の仲間だ。花期が夏から初秋(7-9月)であることからアキカラマツという名称になった。ちなみにカラマツは亜高山帯に生える葉が短く落葉する松である。

 

草丈は1mぐらいある。葉は三つの小葉からなる複葉で、径1㎝ほどの小葉は様々な形を取り先端が二、三裂する。(横に見えている葉は別の植物のもの。)

 

球状のツボミが開くと、ガク片が落ちて雄シベが目立つようになる。派手な花が多いキンポウゲ科の中では地味な種類だが、夜空の星、というか銀河を思わせる。独特の雰囲気を持つ花だと思う。

カヤツリグサ

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夏草の中で目立つのはイネ科とカヤツリグサ科の植物である。どちらも縦にスジがある長い葉を持ち(単子葉)、花びらの無い花を付ける。日なたを好み、畑の雑草として猛暑の下で盛大に繁茂している。ちょっと目を離すとこいつらがはびこって困らされる。

 

カヤツリグサの草丈は30㎝ぐらい。地面に数枚の葉を広げて長い茎を伸ばし先端に花穂と長い葉(苞葉)を放射状に付ける。花穂は2,3回枝分かれして、鱗片状の花が房になっている。全体に緑色だが花は中央が茶色っぽい。上下逆だが、線香花火が枝分かれしながら放射状に広がるのと似ている。画像のように上から見ると独特の対称性のある形が印象深い。

 

茎は断面が三角形で、強靭な繊維が通っている。子供の頃、茎を折り取って遊んだ。両端を二人で持ち両側から繊維に沿って二つに割く。面がそろってしまうとパラっと2本に分かれるだけだ。しかしうまく直交した面で割くことができると、一瞬できれいな長方形ができる。これが昔蚊をよけるために室内につるされたカヤ(蚊帳)に似ていることが、カヤツリグサ(蚊帳吊り草)の名前の由来である。

 

日本の本州以南および中国・朝鮮に分布する。近縁種は多く皆特徴が似ている。画像のものはもっとも普通の種類と思う。以前紹介したハマスゲも仲間である。

エノコログサ

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これも道端の夏草。日当たりのよい所を好むようだ。画像のように他の草と入り混じっていることもあるが、単独の塊になっていることも多い。ものすごい量の種を振りまくせいであろう。緑一色なので遠目にはわからないが、近づくとすぐわかる。

 

イネ科で雑穀のアワ(粟)の祖先とされている。アワの実物は見たことはないが、実の穂が山盛りになっているらしい。世界中に分布するが、考古学で縄文時代以前には日本に無かったことがわかっており、稲作などと一緒に大陸から雑草として入ってきたらしい。

 

特徴的な長い柄の付いた実の穂は子犬のシッポにたとえられる。そのため「イヌコロ草」が訛(なま)ってエノコログサになったとされる。ネコジャラシともいうのは、猫に見せるとじゃれてくるかららしい。英語ではこの仲間をfox tail grass(狐のシッポ草)といい、やはり動物に関係がある。私は、色は違うがそっくりの毛虫を見て以来、ケムシに見えてしょうがない。

タチスズメノヒエ(立ち雀の稗)

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珍しめの植物が見たいと思って丘陵地の雑木林を歩いてみた。猛暑とここのところの天候不順でひどく蒸し暑い。当然誰も歩いていない。汗だくになり、蚊や小さな虫が寄ってきて鬱陶しい。しかも目ぼしいものはナシ。アブラゼミジージーという鳴き声にミンミンゼミとヒグラシが混じり、季節の移ろいを感じるだけ。あとは夏草が繁茂するばかり…。

 

道端の夏草で目立つのはヒメジョオンなどを除くと、ほとんどがイネ科のものだ。オヒシバ、メヒシバは分かるが、他はみな似ていて見分けがつかない。そんな中で背が1.5mほどと高く草むらから穂を突き出しているものがあった。珍しいものではないが調べてみた。

 

南アメリカ原産のイネ科植物。近縁のスズメノヒエは穂の枝分かれが3~4本だが、これは10~20本と多いのが特徴。個々の副穂は若いうちは雄シベの葯で白く見え、実が成熟したものは茶色っぽくなる。

 

ヒエ(稗)は最近では健康食品などに使われているいわゆる雑穀類である。役に立たないヒエという意味で「スズメ(雀の)」が名前に付いている。穂が直立するので「タチ(立ち)」というが、成熟すると垂れてくるようである。

 

道端の雑草でも名前が分かると嬉しい。

迫力の朝焼け

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朝5時。窓に朝日の赤い光が差すのを感じたので、東の空を見るとこの雲が見えた。朱色と紫色の強烈な輝きである。急いで景色の開けたところに行ってみた。こんな雲が東の空いっぱいに広がっており壮観であった。画像では全体をお示しできないのが残念だ。

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 上空に寒気が入っているのであろう。昨日の猛烈な蒸し暑さで上昇した水蒸気が冷やされて雲になっている。昼間なら真っ白なはずだ。

 

色彩と怪奇な形から禍々しいものを感じても不思議はないのだが、意外に感じない。早朝の澄み切った空気と、朝日の浄化力のためだろう。今日も一日頑張ろうという気になる。

早朝の虹

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ここのところ天気が変だ。猛暑の時期に雨で低温の日が何日も続いた。ようやく晴れたと思ったら、しょっちゅう黒い雲が現れて通り雨が来る。天気予報は「晴れ、ただし不安定。折り畳み傘を忘れずに」だ。

 

朝起きると西の空に虹が出ていた。5時40分頃だ。外に出ると、青空が見えているのに肌に細かい雨の感触がある。画像で虹は細長くハカナゲであるが、民家や電信柱の間に一部が見えるとすごく大きく感じる。朝陽の虹なので、朝焼けを反映して七色のうちオレンジ(橙)色が強いようだ。よく見ると外(上)側にごく薄く第二の虹が見える。ダブルの虹を見るのは久しぶりだ。

 

昔、新幹線から東海道線沿いに虹が見えたことがある。地面から巨大な虹が生えているように見え、それが延々と動いていく。太陽との角度が関連しており、それで光学的な現象とわかるのだが、やはり不思議、というか神秘的に感じた。

 

10分後。もう消えてしまった。